岬ヶ丘 さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
夢や人生に悩むすべての人に
農業高校を舞台にした異色の学園青春物語。とはいえ、専門学校を舞台にした作品は既にいくらかあるのも事実。しかしその中でも本作は、専門分野である農業・酪農の世界をかなり忠実に描いており、真面目な作品だと感じました。
個人的に感じた本作のテーマは2つ。夢と命です。
まず夢について。中学時代落ちこぼれ、逃げる形でエゾノーに入学した主人公の八軒。夢や目標をもって高校に入学したクラスメイトに、焦り気味の様子。とりあえず色々やってみる(やらされる?)ものの間違って、迷ってばかり。でも迷う(しかも前向きに)って、それ自体がすごく貴重な経験なんだと思います。そんな八軒の存在は周囲にも影響を与え、クラスメートもそれぞれが抱える悩みや葛藤と向き合いはじめます。
そして命について。エゾノーに入って動物の命をいただくという本当の意味を知り、悩む八軒。特に豚丼と八軒の関係性は本作の大きな軸の一つだと思います。豚丼は、八軒にとって初めて家畜動物と一から向き合い、その最期を見届けることになった意味で、命そのものを象徴した存在。と同時に、八軒は豚丼にかつての自分を思い重ねていたのかなと感じました。豚丼と触れ合う過程で、以前との自分との葛藤・離別・あるいは受容を描く。非常に多くのメッセージが散りばめられていると思います。
最期に個性豊かなクラスメートとその家族、そして先生たち。毎回彼らの言葉の数々に思わずはっとさせられ、考えさせられました。何気ない会話の中で、自然に出てくる言葉の重みといったらありません。
最期に、夢や人生に悩むすべての人にお勧めできる良作だと思います。これを見てすぐ悩みが解決する訳ではないかもしれませんが、明日に向かう元気をくれる、そんな作品です。