狗が身 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
なんとぉーーーーっ!!
元々はTVアニメの企画だったものが大人の都合で劇場版となったらしい本作。そのストーリーも、TVアニメの1クール分ぐらいまでしかないのだそう。
とはいえ、肝心の内容は満足できるものでした。
シーブックとセシリーの関係は早い話がガンダム版ロミオとジュリエットみたいな感じなのだけど、「リア充爆発しろ」なんて言えないぐらい素敵なんだよなぁ。
セシリーの家庭環境を鑑みれば、シーブックがマジでヒーローに見えてくるし、シーブックに救いを求めるセシリーの気持ちもすごくよく分かる。
だからこそ、ラストの抱擁に心が揺さぶられる。まさか富野氏がこんな素直に感動できる結末を用意してくれるとは…。
ストーリー自体はオーソドックスなものだけど、中身はよく出来てる。一回観ただけじゃ説明不足に感じて意味が分からないと思うところもあるかもしれないけど、何回か観てみるときちんと全体を把握できるように最小限の台詞で説明されてるんだ。これまでの宇宙世紀シリーズを観ていることがある程度必要ではあるけどね。
それにしてもこれ、実に続きが気になる。シーブックとセシリーの関係はすごく良い感じに収まったけど、状況はなにひとつ解決してないものな…。
時系列的には逆シャアの30年後ぐらい。シャアの反乱も虚しく相も変わらず地球に住むお偉いさんは一層宇宙への関心を弱めていて、もはや無秩序状態に近い。ロナ家が海賊じみたスタイルをとってるのは連邦への当てつけなのかも。
本作中ではカロッゾを撃墜したといってもクロスボーン・バンガード側の勝利に終わってるんだよなぁ。(ドレルだったかザビーネだったかが凱旋って言ってるし)
ここまでくればもはやコロニー側だって武力を用いずとも、それぞれ独立宣言できそうなものだけど(逆シャアの時だって、独立自体は連邦側も条件次第で許容するにまでなってたし)、よりによってコスモバビロニアの目的が地球に住む人工の削減だもんなぁ…。しかもその為の平気の実験として一つのフロンティアを武力制圧するという過激派ときた。
ロナ家の貴族主義自体もオールドタイプ丸出しの時代錯誤な主義だし…歴代の主人公達がこぞって反論しそうww
ロボットものとして外せない戦闘シーンの素晴らしさももちろん健在。一見するとクオリティーは逆シャアに一歩劣るかもしれないけど、ロボットの動きの細かさと滑らかさは引けをとらない。時系列的に宇宙世紀と言っても別物みたいなもので、MSのギミックや設計思想も大きく異なっているところが面白い。
なにより今回はシチュエーションが良いんだよね!
本作のガンダムF91はガンダム扱いされてるけど本来はガンダムじゃないし開発途中のプロトタイプもいいところ。
連邦側の数少ない小型MSと言っても開発は中断されて予備のパーツはゼロ。ワンオフと言えば聞こえはいいけど、おまけにフル稼働すれば機体の装甲が熱量を処理しきれず剥がれていくという欠陥付き。(質量を持った残像は制作陣も想定していなかった欠陥)
これだけでロマン溢れる機体なのに、作中ではその欠点を利用して相手の巨大MAを自滅に追い込むんだもんなぁ…恰好良すぎるでしょ!!
ちなみに、ラフレシアの自滅で決着はついたものの、その前にF91は機体を中破されており、あれだけラフレシアに接近できたにも関わらず攻撃できなかった点からみても、かなりの接戦だったんだよね。
最後に。
セシリーがジーンズを履くシーンにグッときた。あんなにスタイルの良さが持つ色気を意識させられるシーンって中々無いんじゃないかな…。