「白鯨伝説(TVアニメ動画)」

総合得点
66.6
感想・評価
40
棚に入れた
195
ランキング
2806
★★★★☆ 3.6 (40)
物語
3.6
作画
3.5
声優
3.7
音楽
3.5
キャラ
3.7

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

SF版ガンバの冒険、出崎統(おさむ)監督の不遇な意欲作

NHK衛星アニメ劇場で放送された全26話のSF冒険アニメです。
「ガンバの冒険」の宇宙SF版な感じ、エイハブ船長の魅力が見所でした。
名作…といって良い程の力作なんですが、制作会社の倒産などで全39話予定が削られる等の不遇作。
…主人公ラッキーを故・水谷優子さんが熱演、水谷さんを偲びつつ久々に視聴しました。

{netabare}『物語』
宇宙を舞台に、荒くれ者の「鯨(くじら)捕り」(宇宙の漂流物を回収するジャンク屋みたいな)エイハブ船長とその一味が大冒険!
大冒険の目的は主に「白鯨」という、連邦軍(悪者)の惑星破壊兵器を倒す!
…14歳の主人公・ラッキーの故郷を救うべく、圧倒的強敵を愉快な仲間達が討ちに行く!出崎監督の名作「ガンバの冒険」を彷彿とさせる物語です。

魅力はエイハブ船長と仲間たちの雰囲気。
どんな困難にも屈しない、愉快で騒々しい連中の活力が、語り部役のラッキー視点で小気味良く描かれています。
ギャグというかノリは、正直面白い程じゃないのですが…楽しそうだなーとは思いました。
…シリアスでも茶々を入れるノリは良し悪しあり。テンポと雰囲気台無しな面もありますが、アニメ版「キン肉マン」とか、適度にふざけたノリは嫌いでは無かったです。

ドラマも(特に前半は)重厚かつ人情味溢れる良エピソード多いんですが…展開が遅くて、あんまり冒険している感じがしない。
なので重厚ではあるのですが、宇宙SFとしては地味な感も。
宇宙のジャンク屋としての鯨乗りならではのシーンもっと見たかった。

ラッキーの素性と白鯨打倒の目標が定まって、惑星モアドで連邦関係者と対峙していく辺りからがいよいよ本番戦。
最大の見所はレジスタンスの指導者シロー・トキサダの思想と、エイハブ船長の生き様が激突するシーンで、圧巻。
単なる勧善懲悪に留まらない深みあり。
記憶喪失のアンドロイド、デュウのアイディンティティーの葛藤とセイラとのロマンスもドラマティック。
エイハブと因縁の深い元死刑囚アンドロイドのムラトとの死闘と、ムラトと女上司オハラの悲哀のドラマも良かったです。

物語の軸は「実は白鯨と超因縁があったデュウと、彼を慕うアンドロイドのセイラ」
「悲劇的殺人鬼ムラトの悲哀」
「モアドを救いたいラッキー」
そして「白鯨を追い続けるエイハブ」
エイハブを中心に、ドラマが白鯨打倒に収束していく終盤は、駆け足ながら引き込まれました。
…引き込まれるドラマは素晴らしいのですが、いずれも中途半端な感は、尺不足でしょうか。
もうひとつ「抑圧に対する、自由な生き様」が大テーマだったのかな。
連邦政府の横暴(兵器実験でお前らの惑星ぶっ壊すから退去しろ)や、アンドロイドに対する非人道的な支配…に対し、エイハブ一味(や、コパじいさん)の在り方自体がアンチテーゼになっていると感じました。
ここで単純に連邦を倒せ!と中々ならないのは物語の深さである一方、カタルシスが分かり難い点はマイナス。


どちらかというと後半の方が飽きさせない点では面白かったのですが、惑星モアドに着いてからずっと迷走している感も。
目標が白鯨打倒と連邦政府への反抗…の割には、中々有効な手を打てず(打とうとしてるように見えず)逃げ回ってたり(戦力差故仕方がないとはいえ)。
白鯨が超然とし過ぎていて、ガンバのノロイ程の怖さ感じないのも地味。
終盤に向かいかなり盛り上がってきた辺りで仲間失う…悲劇…からの茶番で貴重な尺2話も費やしてたり(しかもあまり面白くなく興醒め)
前半もそうですが、せっかくの宇宙SFがあんまり活かせてないような。
敵の連邦政府も中途半端だったり、白鯨打倒もご都合主義…
まあ、ノリと勢いは見事でしたけど。ラストの余韻あんまり無い…あと1話あれば…。

総じて出崎統監督テイスト溢れる魅力が随所にある力作なんですが、終始面白かったかは微妙かも。
予定通りに作られていれば名作足り得たかも知れない。
…色々と難がありますが、強い印象に残るアニメなのは確かです。


『作画』
出﨑統監督が徹底的に拘った作画や演出が魅力。
止め絵多用は最近の基準だと評価され難そうですが、どの瞬間も、キャラの心情を最高に感じさせてくれる。
ただ、冒険バトル物としては、地味でした。
白鯨とのラストバトルは流石に素晴らしい。
キャラデザも最近の画一的な綺麗さではない味があり。


『声優』
ラッキーの水谷優子さんの語り部が、止め絵多用の演出と相まってドラマに引き込んでくれる。
少年声だけど絶妙にカワイイ…感情豊か、号泣シーンは流石です。
素晴らしい好演でした。改めてご冥福をお祈りしたいです…。

エイハブ船長の大塚明夫さんの魅力もバツグンでした。
おどけてフザけている時も、怒りを爆発させる時も、優しい時も、これぞ男の中の男!な感じの渋さは流石は大塚さん。
デュウの関俊彦さんも合わせて、共演多かった黄金トリオ。

哀しき殺人鬼ムラトの玄田哲章さん等、とにかく渋いです。


『音楽』
OP「風とゆく」がかなりカッコイイ良曲。OPの時点で大冒険のワクワク感感じさせてくれるに十分。
ED「約束」もセイラのテーマと思われる良曲で心に響く。
セイラ(篠原恵美さん)が歌う挿入歌含め、楽曲面はかなり良く、曲の時点で名作の予感ヒシヒシと。
…これで本編に余裕があれば。


『キャラ』
何といってもエイハブ船長の強烈な魅力に尽きる。
めちゃくちゃ強い、いつも呑気でふざけた態度、仲間をグイグイ引っ張るカリスマ性。
人間的深みもバツグン、揺るがぬ生き様と信念に裏打ちされたセリフの数々が登場人物たち(と視聴者)の心を揺さぶる…
時に厳しく、時に優しく。

ラッキーは子どもっぽい素直さと、辛い困難に押しつぶされそうになる脆さが可愛い。
絶妙に性別感じさせない…ようでいて、時折ちゃんと可愛いのが、たまらんです。

悲劇的殺人鬼ムラトの印象も強い。根っからの邪悪ではない哀しさ、エイハブへの恩義、ドS悪女オハラへの一途な忠誠…はっきり言って、デュウよりもキャラ立っていたような。

デュウはエイハブよりも白鯨との宿命あり、セイラとのロマンス面でもメイン主人公…と思いきや、意外と見せ場が少ない。
セイラも悲劇のヒロイン力は高いものの意外と見せ場が…

シロー兄さんの殉教者めいた指導力はキャラ立ってはいますが、やや胡散臭くもあり。
…なんか「地球(テラ)へ…」めいた異能使ったシーンはビックリ。

ゲストだがコバじいさんも印象的。その生き様も含めて「自由に生きる」清々しさ。

エイハブの愉快な仲間達はいずれも個性派揃いで楽しい連中なんですが、個別の見せ場やドラマは希薄、エイハブ一味の賑やかしな感じ。
ネイティブアメリカンっぽい巨漢のババが一番印象的、専用のエピソードありますし(茶番)
銭型のとっつぁんポジ?なホワイトハットは、シリアスブレイカー、ちょっとウザい。
魅力はあるだけに、ちょっと勿体ないです。{/netabare}

投稿 : 2016/08/26
閲覧 : 762
サンキュー:

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