東アジア親日武装戦線 さんの感想・評価
3.0
物語 : 2.0
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
やはり失速ですか・・
端的に、ゾンビ(カバネ)と人間のバトルに「カバネリ」というゾンビと人間の中間となった主人公が置かれた立場の矛盾を乗り越え、復讐劇をどんでん返すバトルもの。
正直、前半は時代設定を江戸以前の封建時代、動力源がスチーム主体という物語の設定の奇抜さ、劇場版並みの作画や進行の勢いがあり、覇権アニメの予感がしました。
しかし、物語中半から脚本の詰めの甘さがポロポロ見受けられます。
以下、この作品をストーリーから考察すると、かつて多く放送されていた時代劇にいくつかのヒントが存在します。
ストーリーがマンネリ化した時代劇でも多くの視聴者に支持された理由は大きく分けて三大要素。
「勧善懲悪」と「復讐」と下剋上」。
「勧善懲悪」の身分の高い者が絶対権力をかさに身分の低い者悪人とっちめるのでは「水戸黄門」「暴れん坊将軍」「遠山の金さん」のように代表作が多数あり、復讐は有名すぎる「忠臣蔵」や「必殺仕置人シリーズ」。
しかし、身分の低い者が身分の高い者をとっちめる意味での「下剋上」と「勧善懲悪」がセットになった作品は「銭形平次」他そう多くはないところにストーリーの原点が存在すると推測しました。
察するに「下剋上」は治世が安定した江戸時代設定ではほとんど不可能であり、江戸後期から明治維新の混乱期設定では「尊皇攘夷」ような国家観に根ざす大義がない単なる復讐劇が主軸となると脚本が破綻する。
消去法で考察し、武士と民衆の身分が絶対的に固定されていない。かつ、乱世的な身分の曖昧さがあった時代背景となると、脚本がイメージした時代の原風景は、人ならざるカバネリを非人階層と仮定し、非人の身分が固定化したのは江戸期以後であることも考えると、下剋上が発生し社会的なが混沌としていた戦国時代と考えるのが最も自然。
そうなると、シナリオライターは「七人の侍」を意識してストーリーを構成したとしても不思議ではありません。
したがって、日常(平時)では絶対的な身分格差がある武士と民衆が一致協力し危機に立ち向かうストーリーはすでに「七人の侍」で完成された日本的感動ストーリーの定番であり、武士の視点、民衆の視点、人ならざる者(非人)の視点からストーリーが描かれた本作品は何らかのカタチで「七人の侍」をリスペクトした作品ではないかと思います。
なお、上記の考察のヒントは、海外の某アニメ評価サイトで、甲鉄城のカバネリのストーリー展開に悩んでいた海外の方へ「何となく七人の侍に似ている」とカンで答えたことがきっかけで、さらに根拠を明確にする意味で、多少演繹的になりましたがまとめてみました。
実際「七人の侍」のリスペクト作品はハリウッドをはじめ数多くあり、ストーリー構成の方向性は間違っていません。
しかし、ただリスペクトするだけではなく、この作品へどのようにエキスを注入し視聴者の感動を誘うについての工夫、各種の設定を含めて構成自体も稚拙だった感は否めず、特に美馬の復讐とそれに巻き込まれいく甲鉄城の葛藤はもっと尺を使い緻密に描写するべき点であり、ここで消化不良を起こしたつけが美馬の殺害、無名のヌエ化も生駒による救済も、結論ありきの予定調和エピローグの流れが見え透いてしまい、何も感慨が生じなかったどころか、結局何を視聴者に伝えたかったのか・・製作側のメッセージすらも曖昧になったのでは?これが「失速」の意味です。
物語評価「2」は上記を根拠としています。
次に残念だった点は作画です。
正直、劇場版並みのクオリティがいつ崩壊するのかハラハラして観ていましたが、幸い放送に穴が空くことはなかったものの、中盤から後半にかけてのクオリティ低下は制作会社の技量(下請けの選定も含めて)に対してスケジュールが追いつかない典型的な現象です。
一般的にも、スケジュールが詰まると早い安いの三文字(分かりますよね)クオリティになるのは如何なものでしょうか。
最近、クレジットをアルファベットで誤魔化すのも三文字クオリティに対する業界の罪悪感の表れですか?
最初が高クオリティなら、最後まで同じ品質を維持しないとプロとはいえない。
ましてや、作画ミスは円盤で修正などと考えていたならば視聴者を舐めています。
クオリティ維持が困難なら、最初から技量に見合った作画で始めるべきでしょう。
したがって、絶対的なクオリティは高くても、仕事に手抜きがあれば評価は辛くなります。
それでも、他のバトルアニメの中では高クオリティであることは付記しておきます。
キャラデは少し古臭い感じもするけど、個人的には抵抗ありません。
物語には前述指摘のとおり多くの問題点があるけど、キャラはそれなり立っています。
逆に、キャラ立ちに対して物語がお粗末だったのも本作品の特徴ですね。
音楽はエゴイストに興味がないので可もなく不可もなくですけど、主題歌の最初に台詞が入っているのは不評のようですね。
声優さんで気になったのは主人公生駒役。
あれだけの修羅場を潜らせる役柄にしては、感情表現が平坦過ぎではありませんか。