Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
銀河の歴史がここに1頁・・・言葉では言い表せないほどの重厚な物語に圧倒されました。
銀河英雄伝説の視聴にあたって
(視聴とレビューの方針を1作目の「螺旋迷宮」に代表して記載しています)
https://www.anikore.jp/review/1475830/
【銀河英雄伝説の時系列】
(1) 「螺旋迷宮」
(2) 「白銀の谷」
(3) 「叛乱者」(宇宙暦791年/帝国暦482年8月〜)
(4) 「決闘者」(宇宙暦792年/帝国暦483年1月〜)
(5) 「黄金の翼」
(6) 「奪還者」(宇宙暦792年/帝国暦483年12月〜)
(7) 「朝の夢、夜の歌」
(8) 「千億の星、千億の光」
(9) 「第三次ティアマト会戦」
(10)「わが征くは星の大海」
(11)「汚名」
→本編 第1話「永遠の夜の中で」
※ 「新たなる戦いの序曲」
これまで11本52話の外伝と2本劇場版を視聴し、本編に辿りついた時にはこれから待ち受けるヤンとラインハルトが繰り広げる「常勝」vs「無敗」の英雄対決に心が踊り、どんどんと視聴を進めていきましたが、本編を完走して振り返ってみると「常勝」vs「無敗」の英雄対決という小さな枠には到底収まりきれない物語でした。
ラインハルト・フォン・ローエングラム
帝国軍の一士官から始まり、次々と武勲と階級を上げていく彼は破竹の勢いそのものです。
でもそれはラインハルト個人が秀でた才能を持っていたからだけではなく、良い仲間に巡り合えたから・・・
唯一無二の親友であるキルヒアイス、「疾風ウォルフ」の異名を持つミッターマイヤー、「帝国軍の双璧」の片翼を担うロイエンタール、人道より目的達成のための効率・能率を優先させるオーベルシュタイン・・・もう挙げ始めたらキリがありません。
ラインハルトの旧体制以前の家柄優先主義から脱却し、武勲と才能による評価・昇進させた結果が功を奏した訳ですが、ラインハルトを崇め仕えた人財が豊富だった事は彼の類まれなる才能のなせる業にほかなりません。
ヤン・ウェンリー
普段はぼーっとしていて気がつくと紅茶にブランデーを入れて飲んでいる姿や、ベレー帽で顔を覆い足を投げ出して指揮官席に寝そべる姿が印象的な彼ですが、「奇跡のヤン」「ミラクル・ヤン」と周りから慕われる実績の持ち主です。
彼の知恵の泉はどこまでも深く、どこまでも澄んでいるよう・・・
普段は静か・・・でも戦場で動くべき時に動くべき方向に仲間を導く事ができる・・・
だから絶対に負けない・・・
だから数で圧倒する帝国軍にも一目置かれる存在になった・・・
ラインハルトとヤンの戦いは本当に見もので、手に汗握る展開が1度や2度ではありません。
何せ110話もある訳ですから・・・掘り下げようと思ったら、きっとどこまでも掘り下げる事ができたと思いますし、実際相当深掘りされた作品だと思います。
でも、この物語で重要なのはラインハルトとヤンの熱い戦いではなく、「何故人は戦うのか」「戦って何を得ようとしているのか」「それは本当に戦う事でしか手に入らないのか」という警鐘を、この作品が鳴らしているのでは・・・と思えて仕方がありません。
なぜなら「戦う」という事は「失う」事にも直結しているのですから・・・
歴史的名勝負と言われる数々の戦いがあります。地位、名声、栄誉を得た人がいます。
でも賞賛の影には、その何万倍・・・何億倍という人の死が隠されているんです。
中には親兄弟や愛しい伴侶を失った人も大勢いる事でしょう・・・
その死を取り巻く悲しみの数といったら・・・きっと数え切れないのでしょう。
この物語はそんな「辛さ」もしっかり描いています。
時には胸に痛みを伴う様な展開も訪れますが、全部ひっくるめて人間の所業なんだと痛感させられます。
だから嬉しい事が本当に貴重に感じられる作品でもあると思います。
時間の許す方には・・・是非一度視聴して頂きたいと想える作品でした。
物語のスケールはとてつもないです。勿論、「常勝」vs「無敗」しか入らない器でもありません。
たくさんのキャラが駆け抜けていきます・・・そのスタイルと矜持は十人十色・・・
私はそのキャラ達に何度泣かされた事か・・・
視聴する前はキャラデザや作画の古さを少し気にしていましたが、視聴を進めていく中でそんな気持ちはどこかに消し飛んでしまいました。
キャラデザや作画の善し悪しだけで名作が決まる訳でもありませんので・・・
そして110話を見終えて・・・この物語が完結していないことには正直ビックリでした。
物語的には丁度キリがよく歴史の1頁・・・と言ってしまえば確かにそうかもしれません。
でも、人が生き続ける限り物語は続いていくんです・・・
それはこの物語の登場人物も然りです。
こうなると2017年に始動する銀英伝の新アニメプロジェクトへの期待が一挙に高まります。
制作はヌルヌル動く作画に定評のあるプロダクションI.Gさん・・・
HPには原作者である田中芳樹先生のコメントが記載されています。
「原作の小説でも、コミックでも旧作のアニメでも出来なかったことを、思いきってやって下さい。」だそうです。
原作者の先生からこの様な温かいコメントが貰えるなんて嬉しい限りです。
現在のアニメーション技術を駆使したラインハルトとヤンの戦艦同士の対決も痺れそうですが、歴史の次の1頁を刻んで欲しい気持ちもあり正直複雑な思いですが、楽しみであることに変わりはありません。
話題が少し逸れてしまいました。
この物語は「名作とは何たるか・・・」を私に教えてくれた作品になりました。
この作品と出会えた事・・・そしてこの作品を勧めてくれた方々に感謝します。
勿論、「お気に入りの棚」行き決定です。