古川憂 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 5.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
短編アニメとギャグ漫画原作の親和性
「笑い」をテーマにした作品を、「ギャグ」という言葉で一口に括ることは難しい。パロディネタ、シリアスな笑い、シュールギャグ、風刺ネタなど、様々な指向性があるが、本作は「スーパーハイテンションギャグコメディ」と公式にジャンル付けされている。類似した指向性を持つ作品で言えば、京都アニメーションが映像化を務めた『日常』の名が挙がる。両作品の共通項が漫画原作であるのに対し、決定的な差異は、尺である。
一気呵成に畳みかけるようなハイテンポで紡がれるギャグは、読者に恣意的な流し読みの余地を許す漫画という媒体と、非常に相性が良い。漫画という媒体の一番の強みは、読者による読書速度の調整が出来る点だからだ。その点、アニメーションは決まった尺、決まったテンポに収めるために、ともすれば漫画特有のハイテンポを殺してしまう結果となりかねない。そこで本作が提出したのが、「短編アニメに落とし込むことでテンポを殺さない」という解答であった。
『日常』は、確かに原作を尊重したうえで丁寧に映像化されてはいるものの、三十分という尺に落とし込まれたことで、漫画の流れの良さをどこかせき止めている感がある。あるいは、高テンションを長時間持続されることが、視聴者に疲労感を覚えさせる一因にもなりうる。その点本作が秀逸なのは、カットの多発によるスピード感ある映像、そしてキャラクターの間で交わされるマシンガントーク(それこそ「聞き取れない」ことを公式ネタにされるような)によって、一切流れの良さを殺していない点である。
本作こそ、ギャグ漫画の美点を最大に引き出した、非の打ち所のない映像化作品であるように思う。話のネタ自体が万人受けするかどうかは、公平な判断を下せないところではあるが、それはシュールギャグの特性である以前に、万人それぞれが違うツボを持つ「笑い」の特性であるように思われる。
※自分は原作本は未読である為そちらへの言及は避けて本稿が書かれていることに注意されたい。