ヲリノコトリ さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
テーマは「全人類が神級の超能力者の社会で必要な仕組み」
原作はホラー作家(だと私は認識していますが、SFもミステリーも書くらしい)の貴志祐介氏です。私は「クリムゾンの迷宮」を読んでいて、並みの作家ではないなと注目していましたが、このアニメの原作は読んでません。
このアニメのジャンルは「ダークSF」だと思います。ファンタジーというにはシナリオの構成があまりにも論理的、社会学的、人間行動学的すぎます。しかも、原作者がホラー作家なので結構エグいです。視覚的にエグいのではなく、物語の行く先がエグいとでもいうのでしょうか……。
この物語の最も根底にあるのは「神級の超能力者だけで社会を成り立たせるなら、どうしなければならないか」という問いです。{netabare}
思うだけで外界に途轍もない力を及ぼす能力者が現代に現れる。そして現代文明は終わり、新世界が訪れる。というところから物語が始まります。人類は全員その能力を受け継いでいます。
ということは、大問題があるわけです。つまり「思うだけで人を潰し殺せる」能力を全人類が持っているのです。こんな状況で集団が機能するわけがありません。大人は最悪利害の一致で協力できるかもしれませんが、精神的に成長していない子供などはさらに危険です。
しかし、新世界では村が成り立っています。
それを成しえたものこそが、貴志祐介が創造した「新世界の仕組み」です。これが恐ろしく精緻に作りこまれています。まるで国会が法律を作るような作り方で、村を成り立たせるために二重三重の設定がつくられています。 {/netabare}つまり、アニメとしては異様なほど設定に対しての練度が高いのです。おそらく小説の中でも最上級でしょう。
主人公はその世界で能力が発現したばかりの少年少女です。彼らは{netabare} 「世界の仕組み」について直接的には知らず、大人によって作られた特殊な昔話や逸話によって間接的に世界の仕組みのためのプロパガンダを受けています。
そんな彼らが「世界の仕組み」にたどり着くお話が1クール目。「世界の仕組み」を崩壊させる存在が現れるのが2クール目って感じです。この仕組みを崩壊させる存在っていうのも降って湧いた存在ではなく、ちゃんと理論的に生み出された存在なんですよね {/netabare}……ほんと原作スゲー。
まだ見てない人への注意事項は、とにかくダークなことです。ポップな作画に騙されないでください。闇へ向かってガンガン突き進んでいきます。あとバイセクシャルな描写があります。私はこれがまた意味深だなあと思うんですけど、嫌な人は生理的に嫌かもしれませんね。
まどマギの設定とかが好きな人とかに結構オススメかも。設定の練度だけならこっちが勝ってるんじゃないかな。キャラの魅力とか飽きさせないストーリー展開っていう意味ではかなり負けてますけど。