ブリキ男 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
青春真っ盛り、堰を切って猛進する男スバル
初回見た時のスバルの印象は「この人ほんとに元引きこもり?」と言うものでしたが、よくよく考えてみると彼の空回りなハイテンションと行動力は現世での引きこもり生活によって蓄積された鬱屈の裏返しだと思える様になりました。
引きこもりの人でないにせよ、非リア充の思春期の少年はやりたい事が山ほどあっても、能力が追いついていなかったり、活躍の場を見出せ無かったり等の理由で、悶々とした思いを抱えながらも自分の殻の中で怪しげな醸造酒を密造するものです。望みは高くとも力も機会も無い。そんなギャップに苦しむものだと思います。(私もそうでした。)
それが何らかのきっかけで開放される様な事があれば、そのほとばしる感情の勢いは堰を切った様に凄まじく、正に本作の主人公スバルの如き行動に走らせるのではないかと思われます。憧れの異世界にやって来て、謎の事件に巻き込まれ、かわいい女の子とも出逢う。そんなきっかけがあっても爆発出来なかったら、それはスバルが現世で何不自由無い満たされた生活を送っている証拠です。逆にリア充の人であればこんな危険な世界イヤだとか、家に帰りたいとか思うかも知れません。
デタラメな行動力とずれた言動を振りかざし、清清しいまでの猪突猛進振りを見せるスバルですが、彼の唯一ズルい所はやり直せる所です。現実ではこうは行かず、暴走の果てに犯した間違い、恥など、罪、記憶は一生消える事が無く、やり直しも効きません。あの時ああすれば良かったとか、ああ言えば良かったとか思っても、誰かが差し伸べてくれた手を払ってしまったり、人を言葉で傷つけてしまったりしても、その後謝罪して許してもらっても、必ずどこかにその事実は残ります。それ故にそれらを無かった事にして(でもスバルの心には残る。)前よりも思慮深く行動する機会を得られるスバルはやっぱりズルいのです。これは全てのタイムリープ物の主人公達にも言える事ですが、年を食った人間がつい彼(彼女)達を応援したくなってしまうのは、彼(彼女)達を通して、自らの後悔に対するほんの少しばかりの慰めを与えてもらえるからなのかも知れません。逆に年若い人たちがこの作品を視聴出来る機会を得られたなら幸せです。失敗という失敗、寒い痛い言動行動をスバルがみんなやってくれるのですから‥。より思いやり深く、賢く行動出来る様に自分を戒める助けになる事でしょう。
そんな風に思うのでした。