てけ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
夜の太陽
原作未読。
吹奏楽で全国を目指す!という目標を掲げた生徒たちの青春群像劇。
音楽ですがジャンル的にはスポ根に近いかも。
印象に残ったのは主人公の造形。
こういうのって、活発で負けず嫌いという熱血キャラが主役を張ることが多いと思います。
しかし、この作品の主人公、黄前久美子(おうまえくみこ)はどちらかというとクールキャラ。
テンションが低めで、周りになんとなく合わせているような雰囲気。
ですが、冷めているかといえばそうでもなく、感情を表に出すこともあるし気遣いもできる{netabare}ようになっていく{/netabare}。
「実際にいそうな人物像」が意外に感じ、とても気に入りました。
長身なのも、ステレオタイプな人物像を切り崩すためのイメージ戦略でしょうか。
そんな彼女が部活のメンバー(計64人!)に影響を受けながら物事を真摯に受け止めていきます。
特に、感じがどことなく似ている高坂麗奈(こうさかれいな)の影響が大きいです。
こちらは一見クールながら、物怖じしない性格で、負けず嫌いなところがはっきりでています。
麗奈のほうが熱血主人公っぽい性格をしているかも。
雰囲気は月と月、しかし情熱は太陽と月。
{netabare}お互いが歩み寄るお祭りの{/netabare}夜のシーンが映えます。
ストーリーはなかなかドライです。
努力すれば必ず報われるなんてこともなく、実力主義。
ご都合主義的な部分もほとんどありません。
そんな中サブキャラひとりひとりにきちんとストーリーがあり、きっちり魅せてくれるのが嬉しい。
モブメンバーの動きや反応もしっかり表現していて、
アニメというよりおおげさなドキュメンタリーを見ている感じがします。
周りの影響を受けて、メンバーたちが着実に変化していくのはいいですねー。
{netabare}
悔しさで涙を流す麗奈とそれを冷めた目で見つめる久美子。
メンバーとのやり取りの中、久美子が強い悔しさを学び、本気になりたいと気づく。
最終回では、同じ配置で喜びの涙とそれを分かち合う久美子に置き換わっています。
OPではどんよりした雨のシーンが続き、その後雲間から太陽の光が覗きます。
黄色い太陽の前で、黄前久美子が光り輝いていくんですね。
そしてサブキャラたちも互いに影響し合い、輝いていきます。
{/netabare}
ただ、テーマの展開はまだまだこれからな気がします。
この作品では多くのキャラにとって「一生懸命になること」がある種の道標になっていると思います。
言い換えれば、スタート地点に立つのがひとつのゴールであって、その先が見えてきません。
続編ではここからテーマをどのように掘り下げていくのかとても気になります。
美術面は文句なし!
キャラクターは可愛いしかっこいい。
モブキャラのスカートを押さえるような細かいしぐさまでしっかりと描き、動きがとても自然です。
京アニ特有のぼてっとして内股気味の足も健在。
そして、背景がとても綺麗ですね。
光や色、レンズフレアの使い方なんかは新海誠監督を思い起こさせる部分もありました。
リアル志向のキャラ造形やストーリーに雰囲気作り。
アニメーションもハイクオリティですし、これからもキャラたちの「合奏」を楽しみにしています。