TAKARU1996 さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
彼が変わったんじゃない、彼を見る友達の目が変わったんだ…
いつも私のレビューは自分の思った事、感じた事を直接的に語っているのが特徴なのですが、今回はその傾向が顕著に感じられるかもしれません。
納得できない部分ももしかしたら多々あるかと思いますが、これも1つの意見として温かく見守ってもらえれば幸いです。
また、私のレビューはまだ作品をご覧になっていない方の為、初見の方に分かりやすく魅力が伝わるよう今までは評価してきましたが、今回だけは作品の都合上、ネタバレも含むものとなっている事を予めご了承ください…
今回はノイタミナ発のオリジナルアニメ、『ギルティクラウン』について語っていきたいと思います。
まずは大まかなあらすじから
西暦2029年の近未来
突如発生した未知の病原菌、通称「アポカリプスウィルス」の蔓延は日本に深刻な大災害を引き起こした。
発症すると身体がキャンサーと呼ばれる紫色の結晶体に変異し、最終的には砕け散って死亡するそれは六本木で感染爆発
百数十名が死亡したその大事件は「ロスト・クリスマス事件」と呼称され、後世の人々の教訓となっていた。
それから10年、独立国家としての体を失い、無政府状態となった日本はアメリカ軍を中心とする超国家組織GHQの統治下に置かれ、仮初の安寧を享受している。
そんな世界で男子高校生、桜馬集は生きていた。
彼は自らの存在意義と他人との関わりあいにどこか疑問を感じながら日々を過ごしている。
「これでいいのかな?」
「僕にももっと、やれることってないのかな……」
少年からもたらされる素朴な疑問は憧れの歌手・楪いのりとの出会いによって形を変え始める。
GHQと敵対しているレジスタンス組織「葬儀社」との邂逅は彼に何を植え付けるのか?
「罪の王冠」を所有した彼の壮絶な戦いが今、始まる……
ここからは私がこの作品を観て感じた事を著述していこうと思いますが、ここで1つ
アニメを視聴した方は既に気付いているかと存じますが、今回のあらすじ、特に後半の文はかなり皮肉っぽくなっています。
これは決してワザとではないんですが、なるべく魅力満載であらすじを語ろうとするとこの作品は必ず皮肉めいた形式になってしまって…
このレビューを観ておいでの未視聴組の方(いるかどうかわかりませんが…)は決してどこぞのボーイミーツガールのような煌びやかな想像をしないようにお願いします。
そんな展開はこのアニメには微塵もありませんので、期待するだけ損というものです。
さて、実はこの『ギルティクラウン』という作品だけは事前に評判を確認しておりまして(いつもはやらないのですがたまたまです)
やれ「主人公が屑」だの「ストーリーが酷い」だのと散々な評価ばかりをあまりにも多く拝見した為、私も少し覚悟した面持ちでこの作品を観た次第です。
しかし、個人的にはこのアニメ、結構楽しめました。
ラスト3話までは…
急に新設定登場、主人公に対しての仲間面、1クール目のボスぽっと出退場、最終話の意味不ダンスとラストシーン
20話~22話はとにかく納得いかない事ばかりで、自分もかなり困惑したのを覚えています(笑)
私の最終的結論としてこの作品を一言でまとめるなら、1クール目は文句なしに面白い、15話までもキツイ展開あれどストーリー的には盛り上がる、19話までの統治の為に独裁国家作る展開も初見だった身としてはとにかく胸が躍る、ただしラストの3話、お前はダメだ(個人的感想)
とでも言わんばかりに着地点と構成を間違えたアニメ…ですかね。
しかし1クール目と2クール目の途中まではとても面白かったのも事実
他の要素がとてもよかった分、とにかく惜しい作品だった…と言う他ありません。
しかし、酷評だった意見の中で理解できない部分というのは十人十色、どうしても発生するもので…
その点において、私は「主人公が屑」というのだけがいまいちよく分かりませんでした。
桜馬集は「王の力」という特殊能力を持ったにせよ、精神面においてはとても脆弱で繊細な心の持ち主です。
それは当初の描写から自然に私達が判断できる事
そんな彼の他人と上手く折り合いをつけて関わる事が出来ない不器用な性格は展開が進むにつれて疑心暗鬼の負の連鎖に陥っていきます。
望むと望まないとにかかわらず、戦闘へ無理やり加えられ、「葬儀社」のメンバーからは新参に対する期待薄な反応で邪魔者扱い
ヒロインにも自らがレジスタンス活動に関わる理由を真っ向から否定され、もう散々な状態です。
その時点でも意外にきついのに、今度は八尋の弟を救うために彼を兄のヴォイドによって殺害するという高瀬舟的展開
そしてこれだけは語らなければいけない必要不可欠な部分、幼馴染で唯一自分をきちんと見ていてくれた存在の死亡
最後には1クール目から同胞で戦友だと思っていた仲間達全員からの裏切り
正直、あまりにも辛すぎて何度視聴を中断したか分かりません。
確かに「主人公が屑」と言い張る理由として、作中でも彼は颯太のいのりに対する告白を結果的に邪魔してしまったり、祭に不用意な発言を吐いてしまったりなど、欠点も多々あります。
しかし、それを不愉快に感じなかったのは、私にとってそれらの行為が人間としての許容範囲を超えなかったからと、どんな形であれその失敗を無にしていないからです。
彼の犯した罪というのはどこまでいっても人間として1度はやってしまいそうな程、小さき物
他の仲間達の行いと比べるのはあまり好きではありませんが、それでもやはり情状酌量の余地が考えられる産物です。
そのような罪に対して集は咎められ叱咤・非難され、その結果、反省し、変わろうと努力します。
その経緯はきちんとこのアニメを観てれば判断出来る事
彼自身の行動は間違い、修正し、成長するという連鎖によって成立していたな…と観終わってから改めて思いました。
そして何より、こんな人間臭いキャラを22話見てきて、私が共感しないはずがないです(笑)
あまりにも共感しすぎて、これは精神面だけ自分の権化なんじゃないかと…(言いすぎ)
話が少し逸れました。
それらの展開を踏まえた上で考えてみると、私には彼個人を断罪する事は出来ません。
こうしてレビューしてみると、このアニメは「主人公の成長」という1観点だけで観てみた場合、意外によく出来ている事が分かりました(勿論、おかしい部分も少しありますが…)
そんな「桜馬集の成長」に多大な貢献をした人物と言えば、ヒロインの1人である校条祭その人しかありえません。
主人公が挫折から成長へとベクトルが向かっていく過程において、この娘は必ず傍にいて彼を支え、見守ってくれる唯一の良人物
自分の為だけに彼を非難するその他大勢の輩とは違い、ただ純粋に集だけを思い、考えて叱咤・激励する彼女
それはひとえに初恋の男の子に対しての利他的行為であり、私はとても綺麗で温かい物を彼女から感じました。
「優しい王様」に似ているという理由は初恋へと至ったきっかけの一つではあるものの、それからも隣に居続けた理由はこの娘だけが主人公の本性をきちんと分かっていたからなのかもしれません…
ここまで来たので、もうぶっちゃけて言います。
このアニメにおける恋愛要素の見所は集といのりの関係よりも、集と祭の関係です。
それは運命の15話「告白」ではっきりと把握できました。
この回で祭は集を助ける為、自らの命を絶ってしまうのですが、それに気付いた時、彼は絶望感に溢れた、声にならない叫び声を上げます。
大切な人が死んでしまう瞬間に残された人が出す声というのは集のような感情がごちゃ混ぜになった絞りかすのような「音」が最も近いです。
他のアニメやドラマのようにまだ「声」としての体裁を保っている演技は全くのまやかしです(自分も近しい人をすぐ傍で亡くした経験があるのですぐに分かります)
よくここまで真に迫った演技が出来る物だと、主人公の声優さんの演技力に驚嘆してしまいました。
そしてその回と同名のED「告白」を聴くと…
あら不思議、集と祭の関係を歌った曲に聞こえるというコンボ
また、この時点でははっきりとわかりませんが、EDで祭だけ消え方が違う理由が徐々に分かるというのも大変憎い演出ですね…
恐らく、祭以外が急な場面転換により集から姿を消しているのに対し、祭だけが彼を見守るようにゆっくりと消えていくのも、裏切りの有無の違い&祭が集を大事に思っている証明なのでしょう。
まあ、何はともあれ、大切な者との別離という視点から観るならば、15話のあのシーンは本作の中で、いや、その他有象無象のアニメの中で最も真実に近い別れのシーンを表現していると言えるでしょう。
さて、そんな人気キャラであった祭を殺した事によって本作は大反響が巻き起こったそうですが、いや、正直、これはしょうがないといわんばかりです。
リアルタイムで観ていたら自分もどうなっていたか分かりません(笑)
というか俺達が鬱状態になってるのに、7年ずっと一緒にいた集の絶望感はどれ程のものだったのか…
想像するのも恐ろしいです。
そう、この娘は決してサブヒロインという立ち位置に貶めてはいけない。
ある意味メインヒロインが相応しいと私に初めて思わせてくれた存在です。
制作側は校条祭という画期的なサブヒロインを生み出してくれましたが、その反面、楪いのりというメインヒロインの魅力を上手く伝えられなかったように思います。
というか正直、前半の印象と相まってあまりこの娘は好きではないですね(好きな方はすみません)
長々と語ってきましたが、そろそろこれで幕引きしたいと思います。
ここまで駄文を読んで下さってありがとうございました。
いやはや、これはある意味本当に危険なアニメです。
私にとっては「鬱アニメ」と呼んでもいい位の衝撃だったのですが、まあ、それは恐らく私のメンタルが弱い事が大きな一因でしょう(笑)
主人公に対してここまで試練を強いる系はいくつかは存じ上げていますが、あまり観た事がありません。
しかし、現実、私達は他人の心という物をどこまで理解しているのでしょうか?
相手の気持ち、いわゆる感情という物について私達は何も把握していないんじゃないでしょうか?
人心の複雑さ、人間という存在の弱さを今一度考えて見れた作品だったと感じます。
とりあえず、今度は鬱アニメ探訪でもしてみるか…と新たな可能性の扉を開けてしまった初夏の出来事なのでした。
PS.
どんなにご都合主義と言われても
祭含む主要キャラが生き返ったハッピーエンドだったらまだ許した
祭エンドだったら個人的名作になってた