STONE さんの感想・評価
4.0
物語 : 5.0
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
アニメとしては平凡な印象だが。。。
原作は既読だが、古い作品ゆえにいい具合に細かい部分を忘れており、それなりに新鮮な
気分で楽しめた。
まずは大幅なキャラデザインの改変に驚いた。
この辺はネットでの感想を読むと賛否両論あったようだが、個人的には元々絵より
ストーリーに惹かれていた作品だったために、それほど気にならなかった。
むしろ時代設定を現代に置き換えたため、スケ番然としていた加奈などは原作通りだと逆に
違和感が生じそう。この加奈関連では原作が携帯・スマフォのない時代のものだけに、
ストーリー展開などはうまいこと改変しているなという印象。
メインヒロインである村野 里美は主人公の泉 新一の母に似せたデザインに改変したように
思えたが、作品全体において母性というファクターが大きい印象があり、泉 新一にとって
亡くなった母に代わる母性を象徴する存在としての役割を村野の与えたかったのかなと。
人間に擬態した危険生物の恐怖という点ではジョン・カーペンター監督の「遊星からの物体
X」あたりの影響があるのかなと思った。同じカーペンターの「ゼイリブ」の影響もあるかも。
ただ、本作は単なるSFアクションに終わらず、テーマ性、ストーリー展開も更に推し進めた
印象で、まずこの状況に対峙する新一の右手がパラサイトになってしまうという着想自体が凄く
面白い。
この新一とパラサイトであるミギーとの奇妙な同居生活は、次第に相棒感が出てくるバディ
ものとしての面白さがあり、逆に互いの対話を通しての人間と寄生生物の思考の違いが人間と
いうものを浮き彫りにしていく面白さがある。
そして、次第に変わっていく新一とミギーだが、特にミギーの細胞と融合した新一に関しては
自己が変化していく恐怖を通して、自分とは?といった自己認識の問題、人間らしさとは?と
いった人間性の問題などを色々と考えさせてくれる。
あと単純にバトルものとしても、新一とミギーのコンビネーションを活かした戦い方と、
様々なタイプのパラサイトとの組み合わせは、バラエティに富んだ面白みがあった。
一方のパラサイト側だが、こちらも単なる人間を捕食するクリーチャー的存在で終わらず、
その寄生環境によって変化する存在であるところが興味深い。
その象徴的存在なのが田宮 良子で、単に人間に関心を持っていた彼女が最終的には母性愛が
生じたようだが、ここでは新一と母との関係性も絡めて、母性に代表される愛情というものを
考えさせられる。
単なる人間対パラサイトという作品ではないという点では、地球環境のためにパラサイトの
存在は必要と考える広川 剛志や、パラサイト以上に怪物的な浦上という人間側のキャラも興味
深い。
このパラサイトという存在を通して環境問題にも踏み込んでいるが、「人間が環境破壊者」と
いった単純なものではなく、色々と考えさせてくれる。
キャストに関してはミギー役の平野 綾氏が印象的で、当初は女性声優ということで驚きが
あったが、パラサイト特有の無機質感、そして次第に変化が生じることにより感情が生まれてくる
過程が見事であった。
グロいシーンも多いが、いたずらに規制することなく、できるだけ見せるものは見せて、それ
以上のものは演出でうまいことさばいている。規制ばかりで何やってんだか、よく判らなくなる
よりはこちらの方がいい。
正直なところ、作画や演出などはアニメとしては平凡な印象だったが、原作の完成度が高い
ために、ストーリー展開やキャラクター性などで楽しめた。