ムッツリーニ さんの感想・評価
2.9
物語 : 1.0
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
現実から逃げ出し非現実に殺される
民俗学か東方projectに興味のある人なら、タイトルを聞いてまず遠野物語のマヨヒガを思い浮かべたと思います(少なくとも私はそうでした)が、この作品は全く関係のない別物のようです。……遠野物語を読了できていない私が言うのも何ですが(柳田國男読み難いし……)
物語は世の中に絶望した男女グループが人里離れた山奥の村に移り住み、そこで静かに暮らそうとツアーを組むが、向かった先の村で奇怪な悲劇に合っていくというオカルティックサスペンス。
この作品の特筆すべき所は何と言ってもキャラクターのクズっぷりですね。けして策士的なクズや非道なゲスでもなく、ただただマイナス方向にある弱々しいクズ。それこそ現実にもありふれていそうなレベルの嫌悪感を常に与えてくるキャラクター達の誰ひとりとして好感を持てないのは逆に凄いです。
事なかれ主義のリーダー、常にオラついている仕切り屋、博愛主義の気弱な男子、他人を支配する全能感に酔った少年、口を開けば処刑を連呼するメンヘラ女、駆け落ちしたバカップル、前科者、大人になれない中二病、思わせぶりなことしか言わないゲロイン。
列挙するだけでも不協和音が用意に想像出来るレベルですが、だがそこが良い。
けしてそれぞれのキャラが好きというわけではなく、「次は誰が死ぬんだろう?」という悪趣味な期待がにじみ出てくると言う意味では非常に良いキャラ配置ですね。
やっぱりこういうホラー作品で酷い目に会うのは嫌な奴でないと、後味の悪い爽快感は得られませんから。もしくはDQN。
これで「死霊のはらわた」みたいな展開になれば個人的にはもう最高なんですけど、はたしてどうなるやら。
↓見終わって(かなり辛辣なので畳みます)↓
{netabare} 誰も死なないんかーい
上でも描きましたとおり、個人的には登場人物達が怪物に襲われて次々と食われたり、狂った末に殺しあったりする展開を期待していたんですが、見事に肩透かしを食らった感じです。
死霊館とかポルターガイストとか誰も死なないホラー作品もあるにはありますが、
「ホラー作品+モンスター×大量のモブ=餌」という定理がある以上、血まみれ泥まみれな展開があると思うじゃないですかって、誰に言い訳してるんだ……
まぁ、「想像してた話と違う=糞アニメ」とか言うつもりもないし、
大勢の人達が真剣に作り上げた物に対して簡単に糞とか言ってはいけないと思っていますから、この作品に対しても糞なんて言いません。
「死ね」
ちょっとこれひどすぎんよー
正直見てる時の心情としては、途中ちょっと退屈になっても「これは「Another」の時みたいに伏線を貯めに貯めてラストで一気に弾けるパターンのやつだ」と期待して見てましたよ。
そんな私を待っていたのは、最後の最後まで放置してのぶん投げエンド。
もうね、乞食みたいであんまり言いたくないけど、時間返せって言葉しか出てこない。
信じられるか? これ「ガルパン」の監督と「あの花」の脚本なんだぜ?
まず、シナリオの整合性が全く取れていない。
「ホラー作品について整合云々とかバカなの?」という声も聞こえてきそうですが、これはそんな優しい忠告なんて軽々と飛び越えていくから安心してね。
特に解りやすいのが、道から滑り落ちたバスをメンバー全員で押して道に戻そうとして、「無理だ諦めよう」と言っているのに、
次の話になると一人離脱していた運転手のおじさんがバスに乗って戻ってくるというね。
おっちゃんめっちゃ力持ちやな。
こんな前後を無視したシーンが各所にあって、書きたいシーンだけを寄せ集めたようなぶつ切り感。
そして登場人物達の一見意味ありげに見える無意味な会話劇が延々と続き、その中で繰り広げられる微妙な恋愛模様。
こういうホラー作品で誰が誰を好きとかどうでもよくね。
いや世の中にはゾンビと人間が恋愛しちゃう映画とか、肉の塊のようなヒロインと恋愛しちゃうゲームとかあるけどさ。
これは脚本の岡田麿里氏お得意の恋愛要素を、
「恋愛物は苦手」と公言している監督の水島努氏の作風にねじ込んだが故の、いまいち踏み込みが足らない内容なんでしょうね。
更に明らかに不必要な特殊能力やキャラ付け。
「これから死ぬ人が見える」とか言う特殊能力を持つ設定の猫耳フードロリは、結局誰も死ななかったから完全な死にスキルになったし、
物語の最後の方でいきなり存在感を増してきたぽっちゃり名探偵がいたけど、結局いろんな説明をしてくれたのはメインヒロインのエア彼氏とずっと村を研究してたお爺ちゃんで、やったことといえばぷにぷにのお腹を強調することくらい。
いかにも役に立ちそうな面して全く使えないとか、やる気あるの?って言いたくなるレベル。
そして主人公達が訪れた納鳴村という所には、人のトラウマを象徴した姿に变化して襲ってくるナナキという怪物がいるのだけど、
このナナキは別に人を食べるとかではなく、トラウマの元となる人から分離した魂の一部であり、ナナキが外に出たままでいるとその人は消えてしまうから、体に戻りたくて追ってくるんだって設定が最後の最後に明かされるんだけど、
なぜそういう現象が起こるのかとかは一切明かされません。
ただ「そういう怪物がいるよー」というだけなんだけど、このナナキも全く怖くない。
いや正確には「本人にとって一番恐ろしい姿になれる怪物」だから追いかけられる人にとっては恐怖なんだろうけど、見てる観客からしたらなんの関係もないので全く怖くないっていうね。
この頃にはメインキャラのトラウマも明かされて、「このクリーチャーはこういう意味ですよー」と説明がされるのだけど、それぞれが尖りすぎてて感情移入もできないし。
まぁ唯一、意識高い系のポンコツメガネの過去だけは不覚にもちょっと共感してしまったけれども。
そしてクライマックスでは主人公の親友がブチ切れてナナキが実体化。
それまで見えなかった他の人にも同じ姿で見えるようになり、やっとモンスターパニックらしくなった(そういうアニメだっけ?)と思ったら、親友が改心してめでたしめでたし。
結局この作品が何を言いたいのかというと、「良いも悪いも全て抱えて生きろ」って事なんだろうけど、希望を持たせるようでいてそれって凄く残酷なことだって監督と脚本家は気付いてるのかな? というか村に残った人もそのままだと消えちゃうんだよね? なんも解決してないやんと。
物語だけを見れば、個人的には今まで観た中である意味一番酷いかも。 {/netabare}