宮島 蒼 さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
富山にまつわる純愛ファンタジー
●設定について
実は本作の舞台は私の出身地です笑
日照率がとても低いところなのですが、作画が暗めで富山らしさが凄い出ているんです。
正直言って、何もなさすぎるので地元嫌いです。特に冬は大嫌いでしたが本作のおかげで少し変わりました。
雪の使い方がとても上手いです。
静謐な雰囲気が漂っていて、ヒロインの表情の移り変わりが映えます。
個人的に恋愛の感情表現の描写の巧みさでは今のところ本作がトップです。
●声優
湯浅比呂美役の名塚佳織さんは凄いですね。名演でした。
●キャラ
石動乃絵は色々な見方があると思いますが・・・
・突拍子のない行動や意味深な発言をするのは、無意識に自分を守ろうとしているから
・優しすぎて人を不幸に出来ない
が、間違いなく言えるところだろうとは思います。
湯浅比呂美は眉目秀麗の完璧幼なじみでした。
清楚な見た目と裏腹に恋に囚われていますが、大好きな眞一郎と自分が兄妹だと考えていたから気持ちを溜めすぎたのでしょうか。
聡明だから自分の嫌な部分もよく見えるのですが、それと向き合える芯の強さも持っていてとても素敵です。
眞一郎はいい主人公でした。誠実だし、最後は”ちゃんとした”から。
●まとめ
純愛を描く上では狭い世界を作り出すほうがしっくりきますが、現代の感覚でいうと”田舎で幼なじみ同士”より妥当な設定がなかなか見つからないと思います。三島由紀夫が『潮騒』で漁村における純愛を描いたのに構成が似ていました。昔の大層な純愛を描いた作品も一見厳かですが、中身は単なるその時代の人たちが妄想した物語なんですよね。この作品もそういった節があります。だから「富山にまつわる純愛ファンタジーという」タイトルをつけました。
私の出身地でこの素晴らしい純愛作品を創り出してくれたピーエーさんは富山の宝ですね。
純愛物語だと「障害を乗り越えて主役の二人が結びつく」ことが定番ですが、今作での障害は乃絵とお兄ちゃんでした。あくまで骨格は二人の純愛ですが、乃絵も単なる邪魔者ではありません。彼女は眞一郎に出会って恋を知って、もがく姿が描かれています。
「本当に大切な人を思うと涙は勝手にあふれてくる、その本当の涙を知ることができることは…」
このセリフの後に、最終話の乃絵のあの神がかり的な演出です。雪の使い方と『リフレクティア』の挿しこみ方には脱帽しました。
誰も傷つかない三角関係はあり得ない訳で、傷ついたり傷つけたりしながら成熟していく心の様子が確り描かれている作品です。
解釈は視聴者の感性に任せられているとは思うのですが、乃絵は前に進めるでしょう。女性は強いですからね。お兄ちゃんは多分ダメでしょう笑
ちなみに、今作の一番好きなところは、眞一郎のセリフに一喜一憂する中盤ごろの比呂美の表情です。