宮島 蒼 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
俯瞰からの風景とは
知る限りでは、最も世界観に浸れるアニメです。
「美」は不動であるものなので、人間のあさはかな部分は徹底的に排斥されています。
ぜひぜひ、世界の「我有化」を愉しんで下さい。
式かわいい。鮮花ちゃんかわいいで終わっても良かったんですけど
意味不明って意見も多いですし、
大好きな作品なので、まじめに超主観的に考察してみました。
空の境界は全編なんとなく哲学的な作品ですが、
俯瞰風景と矛盾螺旋は特にその色が濃いと思います。
原作も読了してます。
●考察
全編との連関性を考えながら、「俯瞰風景って何なの」って考えてみます。
結論から言うと
本章は全体の導入として、「何が何だかわからなくなった状態」
を表現している話だと思います。
時系列を逆転させてまでも、この話を最初にもってきたのは
「まずあらゆる出来事を批判的な立場で見てみたけど何がなんだかわからなくなった」(俯瞰風景)
⇛「絶対普遍であるものを探求したけど、人間には到達できなかった」(矛盾螺旋)
⇛「黒桐幹也の生き方が人間にとっての幸福なんだ」(終章)
の流れで物語を展開するためだと思います。
わかりづらいのはこの流れを体験するのが巫条霧絵⇛荒耶宗蓮⇛両義式だからなんですけど。
式は絶対者(神みたいなやつ)です。
本作のテーマの一つが「人間の認識の限界」なんでしょうが、式はその境界の外にいる存在だからです。あと男で女ってのも作者からの「彼女は神的立場だよ」っていうヒントだと思います。
間違ってたらツッコミ欲しいのですが、
他の章は伏線はりつつ、盛り上げている感じだと思います。
本作を最も端的にあらわしているセリフが蒼崎橙子さんの次のセリフです。
「高いところから観る風景は何を連想させると思う。自分の住んでいる世界を一望したときに
感じる衝動。たとえ、本人がそれを拒んでいようとも不意に襲い掛かってくる暴力のような認識。俯瞰の視界がもたらす感情・・・それは遠いだよ」
この唯物科学が絶対の時代に何をアホなことを、と考えるかもしれませんが、
(私は嫌いですが)「我思う故に我あり」とか言ってたデカルトなんかは「考えているわたし以外にたしかに存在するものは何もない」と言っちゃうぐらい、「たしかに存在するものって何・・?」って突き詰めて考えるとわからなくなる可能性があるんです。
この「何が本当に存在するのかわからなくなった状態」
自分の存在が揺らいでいる状態が俯瞰からの風景のメタファーだと考えると辻褄があうかなーと思いました。
また詳しく書きたいんですが、矛盾螺旋においてはここから普遍であるものを求めてもがきます。
絶対普遍なものを探求するのが荒耶宗蓮
絶対普遍なものに到達することは出来ないって立場が蒼崎橙子
って感じで続いて行きます。