HG anime さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 2.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
大日本帝国無双
現実ならこういう作品に言及するのは聊か勇気がいるというかめんどくさいのでよほど気心知れた友人でない限りノーコメントですが、ネットの匿名サイトだから気兼ねなく好き勝手言えていいですね。
簡単に言えば、第二次大戦で枢軸国側(特に日本)が無双するという作品(笑) OP、これまでのあらすじ、EDを抜いた時間は約30分。それが32話あるのでけっこう長い。16時間超えの大作。史実ではどうだったか、戦術・戦略の説明、架空の兵器の説明などは一応なされているのでその点では丁寧に作られている。
こういう作品はそのくだらなさ加減をただ楽しめばいいと思う。個人的にはテルマエ・ロマエを観るときのテンションとさほど変わらんかった(鼻ホジぽけ観)。
1945年試作段階の兵器が1942年あたりで量産してたりと序盤からすでにファンタジーだけど、11話(1945年)以降はもうぶっ飛んでる。日本のミサイルや暗号解読や電子機器などがクッソ強くなってくんだけど、まぁ日本最強で連戦連勝というスタイルなのはこの作品は一貫してるのでそういうもんだと思ってわりきるしかないね。短時間でドイツの命令書を改ざんしたりとか日本武尊の対空主砲弾で敵ジェット機数十機を一瞬で吹きとばしたりとか速力50ノット以上の潜水艦とかこれもうわかんねぇな(白目)。
日本以外の国の技術も史実よりも早く躍進しているけど、カオス理論のバタフライ効果で日本の影響がまわったということにしておきましょう(無理やり納得)。
転生した軍の高官たちが、どう負けるかという現実的な目標を掲げていたり、軍の大勝利を国民に公表しない逆大本営発表ともいえるようなことをしているのも面白い。
大日本帝国は国際連盟の規約に「有色人種への差別の撤廃」条項をいれるようにWW1戦勝国の立場と五大国の一国としての立場から提案したり(白人列強に反対くらって実らなかったが)と、日露戦争からこのあたりまでは少なくとも表向きは大多数の有色人種にとって希望であった(東遊運動への非協力的反応とかはベトナム留学生側が政治活動をしたからしゃーないとして)が、WW2において日本は白人列強と有色人種のどちらにつくかも、野望と正義のどちらをとるかもはっきり決めぬまま、大義名分も失って戦争行為をしたようにみえる。まぁこんな単純な話じゃないけど世界的にはこういう認識でみられているのは事実だし、作中でも大高なんかが反省を語ってるシーンがちらほらある(11話など)。転生した大高や五十六たちはそれを改変するというのが第一の目標ですね。そして負けるにしても正義のまま負けたい、ということですね。個人的には大高や五十六と同じ立場だったら彼らのように歴史を改変しようとは思わないだろうけど。こじんまりしてる今の日本は身の丈にあってていいと思ってるし。まぁ私は日本国民であって大日本帝国臣民ではないのでポジショントークにすぎないけど。
この作品はけっこうイデオロギー的な話も多分に扱われているが、案外的外れなことを言ってるわけでもないと思う。
中盤でダーウィンと人種差別の話もでてきたりしてる。進化論は優生学につながって、回りまわってナチスの人種差別にもつながったという見方ができるのは事実。ナチスが人種差別・障碍者差別を正当化したのは他にも経済的な側面などいろいろありますけど(健常者と障碍者では障碍者の方が育成費用がかかり経済的利益が少ない、とかの思わず目と耳を覆いたくなるようなことを公然とラジオ放送してたりしたらしい)、主な正当化材料は進化論ですね。まぁこんなのはぶっちゃけ語られつくされた今更な話ばかりだけど、仮想歴史ものにいれてくるのは不意打ちだった。
9話以降はドイツと敵対、日英同盟の成立となかなか展開としては面白い。
ヒトラーについても絶対悪とせず、世が世ならただの青年だったと前原が言ってたりするのもバランスが良くて好印象。ヒトラーは絶対悪の代名詞とすらいえるような人物として我々は教え込まれたわけですけど、WW1後のドイツの復興についての彼の功績はすさまじいものがあるんですよね。ググればたくさん出てきますから書きませんけど。戦争と虐殺さえしなければドイツ史に未来永劫残るような名指導者になっていたでしょうね。逆の意味で人類史に未来永劫残ることになりましたが。とはいえ作中では極悪非道の悪魔ですw
ルーズベルトは悪そうなまま突然ボニファティウス8世並の憤死を遂げたときは思わずワロてしまいましたが、まぁ彼はご多分に漏れず人種差別主義者だし特に日本人にとっては悪魔でしたからしゃーない。
トルーマンは作中では対日講和派を復職させたりと好印象とまではいかないものの、比較的まともな大統領として描かれているが、現実では日本に原爆2個落としてくれた張本人だということを忘れちゃなりませんね。アメリカでは今では人気の大統領らしい。まぁ原爆のおかげで戦争終結が早まり、日本がドイツのように戦勝国に分断されるようなことにならなかったともいえるけど。
物語の終わりは1950年に日米英と独の間の講和で第二次世界大戦の終結し、世界が2局に別れるというもので幕を閉じたわけだが、物語はまだ続くというナレーションもあったし、現に小説のほうはその後の展開も書かれているようですね。小説の方はおいておくとして、アニメの終わり方はジパングよりマシだけどこれでええんか・・・って感じだった。10年WW2が続いて講和したものの一時的な停戦にすぎんとかエグい。一世界市民としては正直言って前世のWW2の終わり方の方がずっとマシだと思うんだけどw 何度もくどいようだが私は個人的には日本人としても前世のほうがいい終わり方だと思う。
下のナンセンスの例にしようかと思ってやめてここに書いておくことにしたのがアメリカの「影の政府」なるものです。私はこんなものが現実にあるかどうかは知りません故にナンセンスとも言い難く^^; 私はこの作品の架空の設定の一つと思ってます。合衆国の法律をみればわかりますが合衆国大統領の権限ってすさまじいですからね。その大統領が国内世論を退けてまで従わざるを得ないような影の政府なる権力があるかというと、個人的には信じがたい。それに合衆国の最上位にいる金も知識ももった連中はいうほどあくどい連中だと思えません。脱税くらいは多かれ少なかれ合法的にしてますけど、それは私でも彼らの立場ならすると思うし。タックスヘイヴン利用したりするのは間接的に一般国民に税の負担を押し付ける行為ですが、まぁ合法なうちはしゃーない。対策とらん政治が悪い。まぁ一方で彼らが政治家に対策をとらせないように圧力かけてるというのは事実ですが、影の政府というほどの力はないでしょう。
歴史のIFを扱ってるフィクション作品なので初めからおふざけでやってるわけだけど、まじめにおふざけしてるような作品。その点では丁寧に作られている。しかしナンセンスだと思う点もある。
例えばユダヤ人を樺太で釣る点とか。カナンと違って樺太なんぞで釣られるとは到底思えん。でも建国の日に周囲のすべての国から戦争をしかけられるようなところより樺太のほうがええかもしれんね(小並感)。ついでに言っておくとアインシュタインが日本に亡命して技術者として働いてるとかも「ファーwwwww」としかいえんw そりゃアインシュタインもユダヤ人だから他のユダヤ人が日本に集まるから彼も来たのかもしれんが・・・。アメリカと日本の2択で日本をとるか?
一番ナンセンスだと思ったことを挙げると、(作中のルーデンドルフなる人物があの東部戦線の英雄であるルーデンドルフだとすると、)ルーデンドルフが1945年にまだ生きていたり、ルーデンドルフがヒトラーにたじたじであること。これだけだったらまだよかったのだが、東郷平八郎(作中では東郷兵八郎)が普通に出てきて見た目が若いのをみてると、転生するにつけ生年月日が大きく変わってるのかなと思った。もしそうなら(というかそうだろうが、)この設定だけは正直嫌い。Fateのサーヴァントかよw 五十六と違って東郷やルーデンドルフは寿命で死んでるんだから、前世の命日以後に心臓鳴らして歩いてるのはちょっと・・・(もし見た目が若いだけで生年月日が同じなら1950年には東郷閣下は102歳ぞ・・・。102で艦隊司令長官やってるんか・・・? めまいが・・・)
作画は意外にも悪くない。というかけっこういい。
ヒトラー似すぎだろw まぁあのおっさんは七三にしてちょび髭つけときゃ似るけどな。
さすがにガルパンほどぬるぬる動かんが、戦車もそこそこいい作画してると思う。CGのガルパンと比べるのもなんだが。
声優も迫力ある演技ですばらしい。20話「パンツァー フォー!」いただきました。
音楽は空気。
人を選ぶ作品。手放しにお勧めできない。名作かときかれると首を縦に振れないが、ある程度評価してはいる。良作というか佳作というか、そんな感じ。
20話超えたあたりからは作者がこの作品を書くにあたってよく制作意欲が続くものだと半ば呆れていたw しかも小説だとこのアニメ以後の展開も書かれているようだし、第三次世界大戦まで起こるらしい。正気なら書ききれないだろうなぁw まぁそれも才能だとは思うが。
あまりこういうジャンルの作品はないので存在意義のある作品。