おぬごん さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ストーリーと落語のハーモニー
戦前~戦後の昭和期の落語家たちを描いた同名の漫画が原作
この作品の肝は何と言っても落語のシーンです
落語というのは不思議な芸能で、扇子1本で多少の身振り手振りを加えながら喋るだけ
誰にでもできるはずのスキルで、老若男女誰もを楽しませるという誰にもできないことをやってのけるのです
落語や落語家が尊敬されるのは、何も古典芸能(の継承者)だからではありません
「話だけで何かを伝える」という人間誰しもができるはずなのに上手くできないことを、究極のレベルでやっているのが落語なのです
さてこのアニメでは第1話から1時間枠を使い、これでもかと落語シーンを魅せてくれました
アニメ(絵)では、表情や仕草、滴る汗などで噺家を表現
それだけでは本物の落語の魅力には到底及びませんが、これに命を文字通り吹き込むのが声優陣
元落語研究会の山寺宏一、大の落語ファンの石田彰に小林ゆう、落語家に弟子入りしている関智一(この作品のためだったのかな?)と、名だたる名手たちが見事に「落語」を作り上げていました
もちろん現実の名人たちの落語には及びませんが、それを目指し挑戦した冒険心は素晴らしいと思います
ところで作品内の落語は1席5分~長くても10数分でしたが、現実の落語は1席10~30分ほどで、名人の人情話となると1時間近くに及ぶこともあります
これはアニメの放送時間に合わせ極力「間」を省くように作られていたというのもありますが、
本題が始まる前の導入「枕」をほとんど描いていなかったことによるところが大きいと思います
通常落語ではこの枕と呼ばれる謂わばフリートークでお客さんを暖め、また本題の伏線を張ったり本題に出てくる時代背景や用語の補足をしたりします
ですがこの作品では、その枕がほとんで描かれません
なぜでしょうか…この作品には枕は必要ないからです
というのも、この作品全体が、作品内で描かれる落語の枕となっているからです
10話の死神や、12話の芝浜はそれが顕著でしたね
特に12話の芝浜は、芝浜が始まった瞬間に思わず唸り、最後には涙が溢れていました
落語との絡みを除いても、昭和という時代の中で芸人たちの脆く儚い生き様を描いた物語は非常に秀逸でした
ただ最終13話の、分割2クール目に繋げるためとしか思えない詰め込んだ急展開だけが勿体なかった…
分割2クール目があるのは嬉しいんですけどねw
声優陣の素晴らしさは上で挙げた通りです
キャストだけを見たら10年前の作品みたいですが(小林ゆうがいなかったら20年前でも通用しそうw)、その分実力は申し分なく、話に引き込ませてくれました
音楽も時にノスタルジックで、時にオシャレで、時に艶めかしく…作風に合っていたと思います
OPは林原めぐみと椎名林檎のコラボで、いかにも椎名林檎という感じの曲調ですが、歌詞も妖艶な歌声もみよ吉が歌っているかのようで作品にぴったりでした
この作品で落語に興味を持った方がいましたら、youtubeで、笑点メンバーのような有名な落語家の、「饅頭怖い」のような有名な落語を検索することから始めても構いませんので、是非現実の落語を見て下さい
現実の落語の素晴らしさと、この作品の途方もない努力が窺えると思います