OZ さんの感想・評価
2.5
物語 : 1.5
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 1.5
状態:観終わった
マスターアップには程遠いβ版
公式HPのあらすじとキービジュアルで興味を引き
期待は低めに観てみる事にした2016冬アニメ
■マスターアップには程遠いβ版■
争いの激しい美少女ゲーム業界を「荒野」と喩え
ゲーム制作に携わった事のない者達が集い
共に美少女ゲームを制作していく学園物語である本作品。
ギャルゲー制作をメインに展開し
一癖のある人物達を徐々に集めていくという
オーソドックスなシナリオから
主人公 北条 文太郎の持つコミニュケーションスキルを
物語にどうやって絡めていくのか?と
初回の掴みはなかなか面白く出来ている。
しかし 本作はツッコミ所の多さも然る事ながら
ストーリーを盛り上げる為に
"無理矢理にでもトラブルを用意し強引に解決してしまう"
シナリオ構成が致命的弱点と言えるだろう。
例えば第8話で作業の遅れを取り戻す為に
文太郎が缶詰を強いられる描写があるけれど
そこに至るまで海へ行く等の表向きは取材であるが
中身は実質遊んでいるのと変わらないので
締め切りまでの残り時間があと僅かと煽られても
「それなら遊んでいないで制作に専念すれば良いのに・・・」と
"危機感"が全く表現されていないのである。
極めつけは終盤になってメインヒロイン黒田 砂雪が
ゲーム制作をする理由の裏側に
実は兄の借金を返済する為という
唐突に降って湧いた茶番劇には
ただただ苦笑する他なく残念でならない。
またゲーム制作がストーリーの軸であるが
最後まで彼等の作っているゲーム画面が出てこず
終盤での売上勝負にて「私達の勝ちよ」と結果だけ言われても
観ている側としては相手側と競いあう過程が観れていない為に
感動はおろか達成感も何も伝わってこないのである。
気になった部分を挙げればキリがないが
要するに一つ一つの行動に裏付けされる
"説得力"がほぼ皆無であり所々に挟まれるギャグで
シリアスを曖昧にぼかしているだけなのだ。
次にキャラクターだが
シナリオが芳しくなくともキャラクターが良ければ(その逆もまた然り)
なんとなく作品として収まるものだけれど
本作においては無情にもキャラクターも良かったとは言えない。
まずメインヒロインである黒田 砂雪に
どこかで見た様な"強い既視感"を覚えたものだ。
作品数が増えればそれに比例して
似ているキャラクターは生まれるものだが
見た目 口調と他の作品で例えるならば
『物語シリーズ』の戦場ヶ原 ひたぎや
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』の雪ノ下 雪乃を
選り抜いて作られた様な類似感は否めず
ハッキリ言って二番煎じの印象は拭えない。
反対にキャラクターとして印象に残るのが
スクリプト担当の眼鏡少女な安東 テルハである。
だが 安東は場を掻き回す役に位置しており
口論しては再び戻ってくるを繰り返すだけと
トラブルメーカーと呼ぶには単純に身勝手な描写が目立つ為に
好感の持てるキャラクターに映らないのが惜しい。
男性キャラクターに至っては
文太郎のコミニュケーションスキルという
面白く感じられた設定も物語が進めば何処へやらで
他の登場人物達が印象面で弱いので
相対的に良いキャラクターに見えるけれど
インパクトの面で見れば彼も凡庸であり
好き嫌いを抜きにして
砂雪と安東以外は総じて印象が薄く見えてしまう。
良かった点を挙げるとすれば
序盤の文太郎が持つコミュニケーションスキルによる掴みと
疾走感のあるOPくらいなものだろう。
残念ながら本作はマスターアップ版に程遠い
まだまだ開発途上な改善の余地あるβベータ版である。
■あとがき■
第1話の掴みこそ興味を引かれましたが
回を重ねる毎に面白さが削がれていき
非常に厳しい言い方になりますが
よくアニメ化するまでに漕ぎつけられたなと
予想を大きく下回る全12話でした。
関心の寄せられる題材ではありましたが
なにしろ見せ方と言いますか
次々に起こる展開が急いているせいか
ダイジェストの様で感情移入するまでに至らず
如実に構成力不足であったのは否めなかったです。
そして本作とどうしても比較対象に挙げられるのが
同じくゲーム制作をテーマに
2015冬アニメで放送された『冴えない彼女の育てかた』でしょう。
シナリオ面で見れば両作品共に
これから!ってところで幕を閉じてしまいますが
終わってみれば「構成面」と「キャラクター」
この2点で大きく差を感じました。
構成面につきましては前述通り展開の早さと
盛り上げる為に脈絡の無い無理矢理なトラブルの多さから
内面が薄い魅力に欠けるキャラクター達となってしまい
結果 厳しい評価に繋がってしまいました。
果たして本作はゲーム版の販促になり得たのでしょうか?
少なくともアニメ版を観ただけですが
残念ながらプレイしてみたい気持ちにはなれなかったです。
アニメ→ゲームの順で世に出していくよりも
ゲーム→アニメの順であったなら
「本作はツッコミを含め楽しめる作品なのかも」と
作風を受け入れられた上で親しまれる気がしましたね。
満足度 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ (1)