空知 さんの感想・評価
3.2
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
この作品のミステリーは、なぜ視聴者を惹きつけないのか?を考えてみた
原作未読。
P.A.WORKSには秀作・名作もあり、大好きな作品もあるのですが、相性が悪い場合には、観ることが若干苦しいなと思うことが私にはあります。本作は、残念ながら後者に属してしまう結果となりました。P.A.WORKSの作品に対しては常に期待感を持っているため、余計に落胆が大きかったのかもしれません。しかし、最後まで観なければ、作品の良さが分からない場合もありますので、完走したうえでのレビューとなります。
ストーリーですが、吹奏楽がメインなのか、ミステリーが主題なのか、最後までその疑問が残りました。どちらも中途半端なため、吹奏楽に関しても、ミステリーに関してもさほど楽しめませんでした。1クールで吹奏楽とミステリーの両方を描こうとすれば、詰め込みすぎと言わざるをえず、吉田怜子氏がシリーズ構成であっても無理な注文でしょう。どちらかというと、たまたま吹奏楽部員が推理をしているといった感じです。吹奏楽には期待せず、ミステリー部分のみを楽しむと割り切ったほうがいいと思いました。でなければ、{netabare}第10話で吹奏楽の大会当日に、ハルタとチカがチベタン・マスティフの持ち主を特定する推理するという馬鹿げた設定はありえません。{/netabare}吹奏楽は申し訳程度の付け足しにすぎません。本作における吹奏楽の位置づけをみれば、否定できないことだと思います。
また、そのミステリー自体も面白いとは言えません。
表題にも書いたように、その理由を考えてみました。
それは視聴者が「ミステリーに巻き込まれない---つまり一緒に考える情報がない」ためです。
本作のミステリーは、問題解決のための情報がほとんど視聴者に示されません。観ている者が、「う~ん、これはどういうことだろう?」と一緒に考えられる設定になっておらず、「ハルタが解決した答のみが観ている者に与えられる」という展開になっています。観ている者が「ああ、そうか~~なるほど!!」というミステリー解決の達成感を共有できないため、結果を面白く感じられないのです。これはミステリーとしては致命的です。結果、問題解決後に残されるものは、「ハルタって頭いいんだなー(棒)」という感想にしかなりません。例として、{netabare}第5話の「エレファンツ・ブレス」で考えてみます。この回のミステリーは、興味深い推理になるかもしれないと最初は感じました。「エレファンツ・ブレス」とはどのような色なんだろうと。当初は、図書館で調べた結果や、この問題の当事者である老人のアメリカ国内での動きなどが視聴者に提示されます。ここまではなかなか良いミステリーになっています。ところが、老人が描いた絵を見て、草壁先生は答えが分かったようで、突然「それ以上は詮索しないほうがいい」と言うのです。そこからは、ハルタの独壇場となり、いきなり「この絵はおじいさんが徴集されたベトナム戦争で描かれたものだ」とあっさり答えを出してしまいます。{/netabare}。
2016年はP.A.WORKSの設立15周年。その15周年記念作品にリソースの多くを割いた結果なんだろうと個人的には想像しています。P.A.WORKSのファンとして、「クロムクロ」が多くの視聴者に支持されることを願っています。