アレク さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
情緒面で誠実なタイムリープ物
原作は未読です。
いや~面白かったですね~タイムリープ物ですがちょっと気になるとこはありますが
1クールですっきり収まったこともあって視聴後のいいもの見たな~的な浮遊感は高かったです。
{netabare} ですが他の方のレビューでも指摘してますが他のタイムリープ物の先輩作品に比べると
やっぱり構造的に弱いとこもあるかな、フィクションだからこそタイムリープの
起こった理由とか伏線をちゃんと回収してして欲しいんですが主人公の悟が「リバイバル」を
起こす理由が不明瞭なので一回目の大規模な「リバイバル」はまだしも二回目の
逮捕されたときに起こるのはどうしてもご都合だと感じてしまうし「まどまぎ」や「シュタゲ」は
何度でもやり直せるという反則技を逆手に取り何回もバッドエンドを繰り返してしまう
色濃い絶望とそれでも諦めず進んだ先のカタルシスというものが素晴らしかったんですが
本作はそれに比べると後出しじゃんけんにみえてしまうし、バッドエンドをかいくぐり
見えた事件の真相や犯人というミステリー的視点から見ても「ひぐらし」と比べて
ちょっと弱いかなーという感じ、欲を言えば犯人役にもっと狂気がほしかった。
ですが情緒的側面から見るとハッとなるシーンも多く
濡れ衣を着せられた白鳥 潤、子供の頃一緒に遊んでたが今にして思えば怪しい兄ちゃんで
終わりそうなんですが彼もそれなりに苦悩や事情を抱えているということは
29歳になり自身も上手くいかない現実の壁というものを経験した「リバイバル」後の悟
だからこそ見えたことだと思うし悟が奔走するきっかけは彼の濡れ衣を解くためでもある。
そして奔走の一番のきっかけ雛月 加代、彼女も素晴らしいキャラ造形でした。
人口に膾炙して今は商売っ気すら感じる「ツンデレ」という言葉、ですが彼女の場合は
心に深い傷がありまた傷つくの恐れ無意識に予防線を張る、それが結果的にそう映ってしまう
当たり前といえば当たり前の心理の動きなんですが作中でどぎつくない程度に背景が描写されていて
先の後悔を糧に悟は彼女に一歩踏み込み徐々に心がほぐれ朝食の涙のシーンにつながる、
ラベルに属性を張るようなキャラ造形でなく等身大な一人の女の子を感じました。
そして二人で手をつないで帰るシーンの思春期を迎える前特有の無邪気さは思わずニヤニヤ、
こっちまで「だいた~ん」と言いそうになりました(´艸`*)
そして何より子供の頃は街も冒険に満ちていた、
悟と加代二人で見た天然のクリスマスツリー、夜と降り積もる雪のキラキラした
神秘性もあいまり屈指のハイライトシーンだと思います。
学校の友達との関係や「リバイバル」後の母親に対する態度、
加代の事情に薄々勘付いてながらも当時は踏み込めなかった部分、
子供の時分には何もできなかったが振り返って胸に引っかかることがいくつかある
誰しも心当たりがあると思いますがフィクションだからこそできる表現という事をはぐらかさず
しっかり向き合っていて好印象でした。
細部の演出もしっかり取材してる感じで芸が細かく
給食の牛乳のパックが三角形だったのも一度物産展に行ったらそんな形の牛乳パックが
売っていて北海道はそうなのかなと思ったり自分は北海道ではないですが東北出身で
小物とか暖房器具とかがしっかり書き込まれていてあるあるなんてうなずきながら
自分の場合はそういう細かいところを入り口にして自然にすっと感情移入してました。
各話の引きなど演出面でもいい具合に続きが気になる~的な演出も見所で
特に一話の終わり今までにない大規模な「リバイバル」学校の大写しからのED(次回からOP)
十一話での悟だけを除いたOPが不安を煽り第三者視点で悟の母佐知子を長写し
彼が死んじゃったんじゃないかと思わせておいての昏睡状態の悟が出てくるという
演出の引きの良さ、妙味。十五年という歳月に介護を費やすという母親の苦労を考えると
手放しでは喜べませんがそれでも演出の良さが光ったシーンだと思います。
あらすじは省きますが最後で「僕だけがいない街」というタイトルがしっかり回収されていてそこも良かったです。
自分は最初このタイトルは作文にも書いてあったし加代に関係することかななんて思ってましたが
実際ある意味ではそうなんですが十五年たった後彼女たちが無事で子供まで授かり悟が守った彼女たちの
歴史や時間の重み、尊さ、そしてタイトルの意味をこう持ってくるか~という情緒とパズルの最後の1ピースが
埋まるような知的快感が合わさり素晴らしかったです。
そして彼が守った彼だけがいない街から前半関わったとある人物と出会い
彼自身も物語がスタートする、1クールでとてもよくまとまっていて良作だと思います。
声優に関しては悟だけに限って言うと初めは癖は強いが鬱屈した冴えない感じがよく出てたと思うが
叫び声とかの部分は違和感感じたかな。
OP「Re:Re:」
曲自体も良いしサビで悟が大人や子供の姿に流動しながらもがき転がりながら
彼が関わった人物のフィルムが彼を取り巻き最後にそのフィルムが集まり球状になったのを
主人公が遠くから眺める、放送当時からいい曲と映像だなと思いましたが最終回を
迎えた後また見るととても感慨深いです。{/netabare}