chariot さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
じっくりと心情に添った良作。
ラノベ原作の全12話。
RPG風ファンタジー物+シリアス。
ある日異世界にて目を覚ました主人公・ハルヒロ。
魔物と戦い報酬を得て生活して行く世界で同じ境遇の人たちとパーティを組み、生きて行く事に…
まず感想から言うと大変面白く満足いく作品でした。
非常に丁寧に進行するストーリー、細かな心理描写が特徴です。
その為にかなり話が進まない感はあるのですが、そこを引き込む為の演出も伏線も見事でした。
1~3話
導入部に近い形で世界観とハルヒロたちの戦いっぷりなどを描いています。
この作品、個人的に視聴前の期待が高かったせいもあり、正直3話までは思ったより話が動かず微妙な感じもありました。
{netabare}
特にゴブリンを倒すシーン。
寄せ集めで経験もないパーティで必死な様子はよく描かれていたのですが、ゴブリンの必死さまでも丁寧に描写されていた事とゴブリンを倒す為の大義名分が「生活の為」以外なかったせいで(まあ、ゲームでも敵だから以外ないですけどね…)なんだか平和に暮らしてるゴブリンが狩られるというように思えてしまったのが勿体なく感じました。
勿論、生きる為に必要な仕事なのは解るのですが、あまりに殺されまいと抵抗するゴブリンがリアルで…
ありきたりでも旅人や商人を襲撃するとかで害獣扱いされる説明があれば良かったかも、です。{/netabare}
4~8話
{netabare}リーダーでありヒーラーであるマナトの死。{/netabare}
これをきっかけにハルヒロが視野を広く持ち、メンバーの個性や能力、考え方、パーティとしてのまとまりを考えるようになります。
{netabare}それと同時進行で新たなヒーラー・メリイの加入。
ちょっと難のあるヒーラーで仲間として確立する為に四苦八苦。
過去のトラウマから厄介なヒーラーになってしまったメリイと少しずつ相手の気持ちを考え、譲歩しながら良い関係性を築き上げ、同時にパーティリーダーとしても成長して行くハルヒロの姿。
じっくり構えた描写でメリイが次第に打ち溶けていく様子がしっかり見て取れる構成は見事でした。
挿入歌の流れる中で断り続けていた夕飯をみんなと食べるカットがあったのですが、ちょっとここはやって欲しかったかなあ…
毎回断られるのにまだ誘うハルヒロにメリイがどう返事をしたのか…
ただ、ダイジェスト的に流れる映像とBGMだけでもそこまでの描写を怠らなかった分の恩恵で会話はなくとも進展していることが容易に想像出来る作りなのは尺の取り方としてもなかなかの手法だと思います。
マナトが死んだ時は非常に大きな損失に思えたのですが、結果として彼らの意識を変え成長させる起爆剤になった事でマナトには悪いけど彼の死あっての物語だったと思います。{/netabare}
9~12話
ハルヒロたちのストーリーがひとまず片付いたので次はメリイのトラウマを克服する展開へ。
ようやくゴブリン狩りからサイリン鉱山のコボルド狩りへ。
{netabare}メリイにとって行きたくない場所であり、行かなくてはならない場所。
9話でサイリン鉱山を次の狩り場とする事になり、動揺したメリイ。
それを追いかけるハルヒロ。
「乗り越えたいの。そうしないと前に進めない気がして…。だけど…私1人じゃきっと乗り越えられない。誰かの力を借りるならあなた達がいい」
僕は全話の中でこのシーンが一番好きでした。
過去の出来事からずっと自分を戒し、笑う資格もないと壁を作っていた彼女が踏み出そうとする。
キャラの心情を見せていく本作の作りならではの感動が得られるシーンでした。
さて、新たな敵コボルドさん。
自給自足で生活している風な感じで彼らも人からちょっかい出さなければ被害ないんじゃない?ぐらい普通に生活してました。
10話からはコボルド、特に宿敵デッドスポットとの攻防がメインになります。
順調に下層に進み、一旦引き上げるぐらいの慎重さで進み、ついにデッドスポットを発見。
コボルドのデザが見事に獣人的な犬仕様だったので、匂いで見つかっちゃうんじゃないかとハラハラしたんですが…
意外と鼻の利かないヤツらで一安心でした(笑)
伏線回収の手際の良さ。
まずマナトの死んだ時、灰にしないと…というくだり。
これが鉱山で仲間を残して退却せざるを得なかったメリイと残された仲間たちにつながります。
アンデッドとなって現れたかつての仲間。
メリイがディスペルをどのタイミングで習得したのかは解りませんが、いつか仲間を解放してあげたいと思っていたんでしょうね。。
満身創痍でもリーダーらしく盾になってメリイとハヤシを逃がしたミチキがディスペルを受けて消える時にメリイの頭にそっと触れる所。
メリイが生き延びて(魂を)救いに来てくれた…ありがとうと喋れはしないけど、そんなミチキの意思があったような演出で良いシーンでした。
もうひとつがハルヒロが戦闘中に時々光の線が見える時がある事。
最終話で追い詰められたハルヒロが急に覚醒するのではない所が良い。
生命の危機に晒された事で覚醒するのは創作に於いてよくある事で、ご都合主義と言われても熱い演出ではあります。
しかし本作では以前から兆候があり、仕留められる確率の高い状態である事を示唆した上での発生は明らかにやられそうなハルヒロが助かる可能性を期待させるいい伏線だったと思います。{/netabare}
声優。
{netabare}なんと言ってもランタ(吉野裕行)
口も性格も悪く協調性のない憎まれっ子。
こういう感じの役は吉野さん上手いですね。
ウザいぐらいの喋りもぴったりだったと思います。
ハルヒロ(細谷佳正)はいつも丁寧な演技をする声優さんだと思っていますが、今回はちょっといつもと違った感じがありました。
勿論いつも通り丁寧な役作りはされてますが、なんというかいつもより自然体な感じ…
特に女の子3人(別々のシーンでも)に対しての会話でそう感じる場面がありました。
何か意識して演技してたんだろうか…素人にはわかりません。。
バルバラ(能登麻美子)
キャラ的に大好きな人なんですが、たまにしか出ないのにいい味出してましたね。{/netabare}
まとめ。
水彩画風の綺麗な背景、場面に合わせたBGM、会話の間の取り方、話の緩急のつけ方、色々含めてとても良く出来た作品だったと思います。
原作は未読ですがアニメ化に閑してはここまで丁寧にやってもらえるとケチのつけようがないレベルでした。
明るく楽しい冒険譚ではありませんので万人受けするかと言われると厳しいかなと思いますが、一歩一歩進んで行き問題点を少しずつクリアし、ラストも綺麗にまとめあげています。
丁寧な心理描写を積み重ね、特別テンプレ的な個性を押し出さなくてもじんわり物語に引き寄せるようなキャラ作り(キッカワだけは別)、昨今では珍しいぐらい重厚な作品だったと思います。
テンポがスローなので一気見に適しているかもしれません。
シリアス好きな多くの方に観て欲しい一本です。
{netabare}あんなに色気のあるバルバラさんに乗っかられてあれだけ好き勝手されて意外と普通なハルヒロ…
なかなかツワモノだ。。
キッカワさんのザギンでスーシー的な話し方はどうにかならんのか…
結構コミュ力あって面倒見も良さそうだけどあのテンションと話し方だけは受け入れがたい…
ゴブリン役のゴブリンさんがコボルドとかもやってたのは…
そこは別にプライド持たなくていいとこなのか…(笑)
{/netabare}