かしろん さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
はじまりはいつも雨
BSプレミアムで新海誠特集やっていたので見てみました。
【2人はその後どうなったんだろうか】
{netabare}新海誠らしい、美しい映像で語られる、雨の日に出会った、青年と
女性のひとときの逢瀬の物語。
2人はその後どうなったんだろうか。
というか、
2人の物語は綺麗に終わっていると思っている。
・青年の側:彼はマザコンである。
まず、彼の置かれた状況を整理する。
高校一年生15歳で、夢は靴職人orデザイナー。
母は若い男のところに行ってしまい、
兄は彼女と同棲するために出て行ってしまい、
部屋でたった一人で黙々と靴作りに励み、
休みの日は靴の学校に行くためにバイトに励んでいる。
雨の日は一限をサボり、
決して学校の成績は良くない。
なんで、靴なのか。
幼少期の思い出のシーンに答えがある。
母の誕生日に、父、兄と3人で選んだ靴をプレゼントした。
そのきらめいていた靴が彼の心に残ったから。
なんできらめいて見てたのか。
母と自分を繋ぐ、唯一のアイテムであり、思い出だから。
つまり、靴が好きなのではなく、母と自分を繋ぐキーアイテムとして、靴に
固執してしまっている。
自分と家族を繋ぐ、と見えなくもないが、父は兄がその代役を果たしているので、
彼は父親を求めているフシが無い。
また、学校という、自分の成績が上がらず、自分の置き場がない場所からの
逃避先ともなっている。
そして、彼の母はどういう女性か。
1.年齢より若く見え
2.非常に自堕落で
3.子供の事よりも一回り若い男を優先する
4.雑学or文学、古典の知識が高い女性
である。
1と3は台詞のまんま。
2は青年の料理の手際の良さ。
4は兄との会話。短歌のことを兄に聞いた青年。
「分からない。母に聞け」と兄は答える。
つまり、母に聞けば答えを得れる可能性が高いということ。
そんな彼が雨の新宿御苑で出会った女性。
1.年齢不詳だが自分より年上で
2.自堕落に飲んじゃいけない場所で朝からビールとチョコを呷り
3.初対面の若い男にモーションを掛けてきて
4.そのモーションが意外な短歌を一首つぶやき
こりゃ、心を持っていかれるって。
その心を持って行かれた女性に彼がしようとしたこと。
彼女が歩くための靴を作ってプレゼントしたい。
・女性の側:生徒に頼られる先生でありたい。
まず、彼女の置かれた状況を整理する。
高校の古典の教師27歳で、
生徒の逆恨みから学校やPTAに流言飛語を飛ばされ、
付き合っていた同僚の教師からも噂を疑われ、
精神的に参ってしまい味覚がおかしくなり、
付き合っていたその同僚とも別れてしまい、
毎朝、学校に行こうと駅には行くが、
学校へ向かう電車には乗れずに、
新宿御苑で朝からビールとチョコを呷っている。
彼女が彼に求めたもの。
彼女は教師で在りたいと思っている。
が、トラブルからそれが出来なくなった。
そんな折に出会った青年。
高校生であり、自分と同じく、居場所を失っている青年。
高校生である青年に頼られる自分でありたい。
・2人はその後どうなったんだろうか
15歳と27歳。
母とその彼氏と同じく、一回り年の離れた2人。
まず、青年の行動。
女性から送られた手紙を読みながら、2人が出会ったベンチに出来上がった
靴を置く。
この行動が全て。
彼女との繋がりを持ち続けたいなら、箱に入れた靴を背景に、手紙への返事
を書くシーンにする。
エンディングで母親が帰ってきた画も描かれており、女性への思いは彼女の
靴の完成と共にケリが付いている。
そして女性側。
部屋を出て行った青年を追いかけるシーン。
彼女は靴を履かずに裸足で彼を追いかける。
彼が作った靴を履かずとも、彼女は歩いていけるという明示。
そして、その通りに、引越し先で教師として頑張っている。
彼も彼女も、互いを求める必要がなくなり、互いの道を歩き出している。
つまり、2人の物語は綺麗に終わっている。
彼は靴との関わりをどうしたんだろうか。
普通に考えれば、彼女の靴を作り終えた時点で夢と一区切り。
現実に向かって歩き出している、と思う。
話変わって。
相変わらず映像が綺麗。
だけど、ちょいちょいあざとさが見え隠れ。
雨が水たまりに落ちて跳ね返ってるシーンは、
「ほらほら、こんな表現までやっちゃうぜ」
みたいなあざとさが悪く出た感じ。
中盤の足の計測場面は艶かしすぎて良い。
ヘタなエロシーンよりよっぽどエロイ。
この辺はあざとさが良い方に出ているとおもう。{/netabare}
見る前は、正直、あんまり乗り気ではなかったが、面白かったです。