「灰と幻想のグリムガル(TVアニメ動画)」

総合得点
87.4
感想・評価
1962
棚に入れた
9447
ランキング
156
★★★★☆ 3.9 (1962)
物語
3.8
作画
4.0
声優
3.8
音楽
3.8
キャラ
3.8

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ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

見ているような、見ていないような

 ニコニコ動画で視聴しているんですけど、ほぼ作業用BGM状態になってしまっていて、未だにキャラの名前が分からないという体たらくです。ストーリーの方は問題なく着いて行けていますけどね。

 ここまで飛ばし見をしていてもストーリーが分かるってことは、つまりはストーリーの進行が極めて遅い作品ってことですよね。バトルを見せたいっていうよりは、心理描写を見せたい作品なんだと思います。会話劇だけだと退屈になってしまいますから、それを避けるためにバトルを入れているっていうのが正しそうです。会話劇とバトルのバランスもそんなに悪くなさそうな印象です。
 ただ、会話劇ならやっぱりアニメよりは本の方が向いているよな、とは思います。スローテンポとは言っても、自分の思考リズムと合っているわけではないですから、もうちょっと考えたいところでは速く感じて、どうでもいいところでは遅く感じるってのはありますからね。まぁテレビ放送ではない動画視聴なら、一時停止も巻き戻しも自由自在なので、どうにでもなるんですけどね。


 で、とあるシーンを見たときに、北野武監督のインタビューを思い出しました。某映画が公開される際にテレビでやっていたもので、その中で北野武監督は「映画は因数分解である」とおっしゃっていました。
 とあるシーンっていうのは、第10話にあるバトルシーンです。「剣士の攻撃→女の子の攻撃→戦士の攻撃」というカットが続いて、その後に3体の敵が倒れるカットが入る、というシーンです。


「映画は因数分解である」:{netabare}
 北野武監督は、インタビュー内で次のような例を使って説明していました。

 あるヒットマンXが敵のアジトに侵入し、ABCDという4人の敵を順に倒していく。XがAを倒すシーンをAXと表記するとき、このシーンを時間軸通りに撮影するなら「AX+BX+CX+DX」となるが、このように撮ってしまっては美しくない。
 ①「(A+B+C+D)X」とするか、②「AX+(B+C+D)X」とすべきである。

 ①「(A+B+C+D)X」というのは、Xが銃を撃つシーンを4カット入れ、その後にABCDがそれぞれ倒れているシーンを写すものである。Xがヒットマンであることが分かっていれば、これで何が起こったのかは十分に伝わる。
 ②「AX+(B+C+D)X」では、まずXがAを倒すシーンを入れる。その後返り血を浴びたXがアジトから出て来るシーンなどを入れ、次いでBCDがアジト内で倒れている様を描く。これでXがAに加え、BCDを倒したということは分かる。

 ずいぶん昔のインタビューなのでうろ覚えのところはありますが、大体こんな感じだったと思います。暴力そのものを描きたいならば「AX+BX+CX+DX」でもいいけど、俺はそれをやりたいんじゃない、みたいなことも言っていたかな。
 まぁ別にこの手の手法は良く見かけるものですし、北野武監督が編み出した手法ってわけでもないだろうから、わざわざこのインタビュー例を持ち出す必要もなかったかもしれませんけど、解説自体は結構分かりやすいと思います。時間経過に合わせて同じようなシーンをダラダラ続けるよりも、同じ要素をまとめてしまった方がスッキリするって話ですね。まさに因数分解です。


 件のバトルシーンっていうのは、この①のパターンですよね。「攻撃→倒れる」を三回繰り返すんじゃなくって、先に攻撃シーンを三回入れて、まとめて倒してしまう。
 バトルを中心に据えた作品ならば、このような演出はあまりしないと思います。個々のキャラクターの見せ場として、丁寧にバトルを描くべきところです。バトルマンガなんかでは、サブキャラの戦いを何週にも渡って続けていることがままありますが、それはバトルを見せること自体が作品の中心に置かれているからでしょう。
 本作でそうしなかったのは、バトルをあくまでもおまけ要素として見ているからに他ならないのだと思います。心理描写を見せたいのだから、バトル自体は省略してしまえってことですね。
 ちゃんと見ていないので面白い作品なのかどうかは分かりませんが、テーマに合った演出を心掛けているんだろうなぁ、と先のインタビューを思い出しながら感じました。{/netabare}

投稿 : 2016/03/26
閲覧 : 352
サンキュー:

13

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