STONE さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
スレインの泥縄的行動?
1期のラストで界塚 伊奈帆とアセイラム・ヴァース・アリューシアが死んだかと思わせる
締めを受けての続き。
まあ、この展開があざとすぎる感が強かったため、二人とも生きていたことはさほど驚きは
なかったが、アセイラムの地球に対するスタンスが180度変わっていたことには驚いた。これに
関してはレムリナ・ヴァース・エンヴァースによる替え玉というオチを早めにネタ晴らしして、
後に引きずるような展開ではなかったが、掴みのインパクトとしては結構良かったのでは
ないかと。
ストーリー的にはスレイン・トロイヤードのヴァース帝国での地位向上や、地球側の反抗が
大規模になったこともあってか、舞台のスケール感は大きくなったが、人間ドラマとしては1期
以上に伊奈帆、アセイラム、スレインの三人、加えてアセイラムの替え玉となったレムリナを
中心に進んでいく感が強く、逆にこじんまりした印象。
一言で言うと「スレイン野望編」といったところで、1期では変動する状況に翻弄されていた
スレインが自身の意志で全体の状況を動かしており、実質的主役はこの人かなといった感じ。
ただ、これもアセイラムを救うためのそうせざるを得なかったその場その場の行動の
積み重ねといった印象で、その結果がアセイラムの最も望まない状況というのはなんたる皮肉。
地球侵攻に関しては、アセイラムの望む平和という最終目標を同じくしても、アセイラムが
試みた和平による平和は無理だと判断したのだろうか。これに関してはレムリナ、
ザーツバルム、ハークライトとの交流を通じてのヴァース帝国の改革の一端もあったようだが。
それにしてもスレインという男は「本当に運が悪いな」という感が強く、1期でも
クルーテオに真意が判ってもらえたと思ったら、そのクルーテオが殺されたり、やっと
アセイラムに会えたと思ったら、アセイラムが撃たれたりと、とことんついてない。
本作でもアセイラムが目覚めることを望んでいながら、それを諦めてしまい、目覚めて
ほしくない状況でアセイラムが目覚めるという最悪の状況。ここからのスレイン、アセイラム、
レムリナのやり取りはヴァース帝国全体の行く末に関する大きなものでありながら、やっている
ことは妻がいながら、外で浮気をしている男のそれと同じで、不覚にも笑ってしまった。
根本的には地球人でありながら、ヴァース帝国に籍を置くという境遇がスレインの状況を
困難なものにしているようだが、これもやりようによっては地球とヴァースの架け橋となる
武器にもなり得るわけで、結局はアセイラム以外を、最終的にはそのアセイラムさえも
信じられなかったのが大きかったみたい。
恋愛ドラマ的には1期ではアセイラムが伊奈帆とスレインのどちらかとくっつくかと思って
いたが、結果としてはクランカインという突然現れた感のあるキャラと結ばれるというオチ。
このクランカインというキャラに関しては最終的な展開のためだけに配置された駒という
印象で、かなり唐突感が強い。個人的にはクランカインとマズゥールカは一人のキャラで
良かったんじゃないかなと思う。
図式としては三角関係の状況に、まったく別の男が現れてくっついてしまった形だが、
アセイラムにクランカインに対する恋愛感情はないみたい。そもそも伊奈帆やスレインに
対しても良き友ではあっても恋愛感情はなかったようで、劇中で自身も語っていたように、
その身分・立場から自分の感情よりヴァースの臣民のことが優先されるというノブレス・
オブリージュ的な思考が徹底している人なのだろう。
逆に同じく皇族でありながら冷遇されていたレムリナが、成り行きとはいえスレインに必要と
される存在になったことで恋愛感情が芽生えたようで、スレインの心はアセイラムにあるという
ことを知りながらも、アセイラムの代わりを続けることでスレインとの繋がりを保つという
関係が悲しくもある。
この絞り込まれたメンバーによる人間ドラマ中心に話が進行していったせいか、他のキャラの
ドラマ部分はおざなりになった感が強い。
鞠戸 孝一郎を兄の敵のように思っていたダルザナ・マグバレッジもいつの間にか和解して
いるようだし、伊奈帆がマズゥールカを逃がすというところを目撃してしまった網文 韻子の、
伊奈帆への片思いも含んだ複雑な感情もなんとなくフェードアウトといった感じ。
火星人でありながら、父を殺されたことで火星人を憎むライエ・アリアーシュの心の行く末も
描いて欲しかった部分かな。
いわゆる戦闘部分では伊奈帆とスレインのライバルストーリーを印象付けるためか、この
二人が飛び抜けている感が強い。伊奈帆の強者振りは1期からだが、本作ではアナリティカル
エンジンを搭載した義眼を付けたことにより説得力は増した感がある。
スーパーロボット的なヴァースのカタクラフトとリアルロボット的な地球のカタクラフトと
いう構図は変わらないが、本作では地球側もそれなりの反抗作成を試みているところなどから、
1期ほどの地球側の絶望感は感じられない。
そもそもアルドノアによりそれぞれが特化した超性能を持つヴァースのカタクラフトだが、
機体そのものは地球のカタクラフトの攻撃で撃破されてしまうようなもので、絶対数の少なさも
あって、とても地球を圧倒できるようには思えないのだが。
1期での伊奈帆とアセイラムの海の色に関する雑談が、本作においてレムリナが扮した
アセイラムの正体に気付くきっかけとなったり、1期初回の揚陸城の急襲と、本作最終話の
伊奈帆とスレインの大気圏突入のいずれもモブ姉妹が流れ星と見誤ることによる対比など、
細かい部分が面白かったりする。