どらむろ さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
手塚治虫原作の特撮番組のアニメ版。マイナーですがテーマ性は深い、エンタメ的には地味かも。
原作は手塚治虫の漫画ですが、1966年~67年放送の特撮番組が非常に有名で、そのアニメ版OVA全13話です。
正義対悪の勧善懲悪…には収まらない、地球の生命や人類のあり方といった手塚治虫先生のメッセージが込められているテーマ性の深い作品。
…エンタメ的には些か盛り上がりに欠ける面あり、正直凄く面白かったとは言えぬのですが、印象には残りました。
…ちなみに特撮は未見です。アニオリ要素がどこなのかはわかりません。
ウルトラマンに先駆けた日本初のカラー特撮番組らしいです。
{netabare}『物語』
ゴアという敵の親玉が人類滅ぼそうとしていて、これを正義(というわけでもない)の巨人マグマが阻止すべく戦う。
のですが、マグマはあくまでお助けキャラで目立たず。
ドラマは主人公の少年マモル君が色々と頑張ったり葛藤しつつ、マグマを呼び出したり、マグマの息子のガム(父と違い人間大)と協力してゴア率いる人間モドキという怪物と戦っていく…。
マモル君が非力ながら、不透明でジリジリと脅威が迫ってくる状況に懸命に立ち向かう健気さが良い感じ。
…でも痛快バトルアクションとしては空気が重めで地味な展開多いです。
本作の特徴は素朴な勧善懲悪バトルアクションというワケでは無いところ。
ゴアが人類滅ぼしたがっている理由にも一理あったり、一方の神アースも全面的に人類の味方というわけでも無かったり。
ゴアの動機は無敵超人ザンボット3のブッチャーみたい。
人類は地球にとって害悪で滅ぶべきなのか?
何故生き残りたいのか?
…という問いが全編のテーマな感じ。
敵のゴアは人間モドキという人間社会に紛れる怪物使ったり、日本政府も裏で癒着してたり、マモルにとっては人間社会自体も味方とは言い切れない複雑な状況が、重苦しくも色々と考えさせられる展開を生んでいた。
…一体、何が「正しい」のか?一筋縄ではいかない感じ。
ここら辺のドラマは興味深い一方で、バトル面のカタルシスが乏しい面あり。
バトルよりも、人間モドキにも心があり、愛がある…そこからの悲しき物語がベタながら泣かせてくれました。
「命を慈しむ心」「大切な人を守りたい気持ち」
尊いですねぇ…。
7話~10話が物語的に一番胸打たれました。
11話唐突に恐竜時代へ。
ゴアも戸惑う、敵も味方も巻き込まれる異世界編、トランスフォーマーとか最近だとテンカイナイトでも見た。
ここで国東さん(マモルたちの味方の軍人)が正当防衛で恐竜射殺→アース様「なんで無駄な殺生するの?恐竜は食べるために仕方なく殺すけど君ら人類は何なの?」的な問いかけ(というか非難)
…えー?だって反撃しないと死んでたじゃん。防衛本能は生命の基本では。
うーん?このシーンは疑問です。
本作のメインテーマ「命を慈しむ事が人類に求められている」なんですが、7話~10話の種族を超えた尊い愛は良かったけれど、これは無い。
終盤、人類滅亡が迫る絶望的状況で、なぜ生きたいのか!?
メインテーマは「命を慈しむ」なんでしょうけれど、思うに「愛」というのは結局「自分にとって大切な人を守りたいエゴ」だろうし、むしろそれが人類の強さなのでは…と思った。
これは本作の模範解答からズレているとは思いますが、私的に7~10話と終盤を観た正直な所感です。
終盤の展開は強引なご都合主義なのは問題ではない。
ゴアも悪ではなく、ゴアとアースそしてマモルたち人類のそれぞれ異なる主張が交差しラストの地球の意思へと収束していく流れは不思議な感動…があるような、煙に巻かれたような?
手塚治虫の非常に深い思想あり色々と考えさせられますが、私にはちょっと難しい。
総じて深いドラマがあるのですが、全編に渡りややフラストレーション感じました。
いや、多分名作だと思うんですけどね。
『作画』
キャラデザは手塚絵に近づけた感じですが、目元に違和感あり。
同時代や80年代の手塚アニメの方が現代にも通じる良作画なのに比べるとイマイチ萌えない。
マグマ大使はイケメンなんですが、バトルが地味なのが難でした。
しかしクオリティー自体は十分高いです。
不気味な演出や大災害の迫力など、名場面も多し。
『声優』
マモルは菊池正美さん、健気な少年役を好演でした。
マグマは大塚明夫さん、イケボですが地味な印象。
ガムの石田彰さんの美少年ボイス、声が若いです。
ゴアの大平透さん、アースの宮内幸平さん等豪華声優陣。
ゲスト女性陣が優秀、未来(ミキ)は伊藤美紀さん(配役名前狙ったのかな)ミステリアス少女、さやかさんの松井菜桜子さんは三つ目がとおるの和登さん繋がりです。
『音楽』
OP「愛がある星」が直球素直なヒーローソングで良い主題歌なんですが、若干趣味に合わんです。
ED「マグマ大使主題歌」は古い特撮めいた感じ、独特の雰囲気有り。
『キャラ』
マモル君は非力な人間でありながら善戦、ちゃんと存在感出していた。
ちゃんと物語のキーになっている良い主人公。
相棒のガムはベストパートナーになるまでが地味ながら最終的には良き相棒でした。
マグマは主戦力なんですが正義的には透明な感じ故か存在感が地味。
アース様は善でも悪でも無い、まさに神様っぽい。
ちなみに「コンクリートレボルティオ」のアースちゃんの元ネタ、アースちゃんのズレている正義のあり方も元ネタが影響してそうです。
ゴアは良かれと思って人類抹殺しているので別に悪ではない…
彼も色々と戸惑ったりして可愛げあるのですが、ラスボスとしては微妙でした。
未来は序盤の名ヒロイン…なんですが、マモルとの関係が薄い為か、イマイチ感情移入が…。
とある理由から敵にとっても下手に殺せないヒロイン…ブルーシードの藤宮紅葉ちゃん(1994年放送)の1年先輩ですね。
惜しい、おいしいポジションのヒロインだったのに。
ミドリちゃんの方が悲劇のヒロインとして印象的でした。
種族は違っても人を愛する気持ちは変わらない…泣けました。一番かわいい。
国東さんが何気にもう一人の主人公だったかも。
頼れる大人がいるって良いですね。{/netabare}