狗が身 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
君は、刻の涙を見る…
初めて全話視聴した時は、複雑に変化していく戦況や勢力図と難解なセリフ回しで理解しきれず、消化不良な気分を抱き、ショッキングな結末も相まって本作に対してあまり良い感想を持てませんでした。
しかし、二度目の視聴、三度目の視聴と重ねるにつれて理解が及んでいくと、その内容の濃さに驚かされることとなりました。
ティターンズの暴挙、シロッコの暗躍、アクシズの陰謀、曖昧な姿勢の連邦政府……ストーリーは4クールという長さに相応しいボリューム。
そんな激動の戦禍を戦い抜いたカミーユが、精神を崩壊させてしまうという終わり方は、あまりに衝撃的でした。
ただ、その兆候がみられたのは48話のロザミア絡みだったので、やや唐突感は拭えませんでしたね…。
もっとも、後半に差し掛かるとシロッコやハマーンといった強力なニュータイプとの接触が増えていっていたので、カミーユのニュータイプとしての力も肥大化していったと解釈できなくはないのですけど…。
カミーユが精神を崩壊させてしまった大きな理由は、やっぱり、周りのフォローが足りなかったと考えるべきなのでしょうか。
ニュータイプとして最高の力を持っていると公式でも称されるカミーユですが、彼の生来の性格は、その力を持て余していたという印象があります。
カミーユは、冒頭の頃から感受性の強さを度々描かれてきました。仲間の死だけでなく、敵の死に対してもアムロとは異なる反応をみせています。例えば、地球に降下していく中で敵のMSを撃破した彼は「こういうやり方は卑怯だ」と自己嫌悪しています。ここら辺は、リックドムの撃墜数を数えていたアムロとの差が顕著です。
その生真面目さが、彼の心を追い込んでしまったのでしょう。そりゃあ、短時間の間に多くの仲間の死を感じてしまえば、ニュータイプでなくとも心は壊れてしまいます。実際、続編であるZZの主人公は、カミーユと同じように機体の強化をしながらも精神に異常をきたしませんでした。これってつまり、カミーユの心が壊れてしまったのは、ニュータイプとしての力によるものとは言い切れないってことですから。
そんな彼の危うさに唯一気づいていたのはレコアでしたが、彼女はその時点で既にシロッコ側についており、彼のメンタルをフォローできる人物の不在が、レコアの指摘した通りにカミーユの心の崩壊を招いてしまったのですね…。
カミーユについてエマは、敢えて冷たく突き放して自立を促すしかないと発言していましたが、よくよく考えてみれば、両親から愛情をきちんと注がれているとは思えないカミーユの家庭環境を鑑みれば、もっと親身にフォローになってあげるべきだったんですよね。
ここからは悪い点になりますが、まず一つ、息苦しさが挙げられます。
これこそがZガンダムの醍醐味、と言えなくもありませんが…空気が重すぎましたね。
とくに、序盤~中盤辺りまでは、カミーユの心境が安定しなかったこともあって、非常に息苦しい空気が続きます。
そんな中でもアムロの再登場や、フォウを前に自分のコンプレックスを曝け出すシーン等、印象的な場面があったのが救いです。
また、テーマやメッセージを訴えるのに必要な設定だとはなんとなく分かるのですが、さすがに、終盤のオーラや巨大サーベル、敵MSの機能停止はやり過ぎに思えます。
一応、設定上はそうなった理屈があるみたいですが、作中にはまったく触れられていませんので、実質設定がないようなものです。最低限の説明は入れてもらわないと、置いてきぼりをくらってしまいます…。
すみません、かなりの長文になってしまいました。もう少しコンパクトにまとめたかったのですが、本音を書けば、もっと書きたいことはあるんですよね…。
細かい欠点はそれなりにありますが、それを補って余りある魅力を備えた一作だと思います。