りくりく さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
SF新時代の最高傑作
村の外には出ては行けない。厳しい戒律で縛られたその村には、子供達には隠された数々の謎があった。好奇心と恐怖にさらされた子供達はそれが何を呼び起こすのかも知らずにその禁をついに破ってしまう…。
最初の五秒でこの世界観に引き込まれること間違い無しのこの作品は自分をSFの世界へと引き込んだ。貴志祐介の小説が原作となっており、アニメ版を視聴の後、原作も読んだのだが、このアニメは原作の設定を忠実に生かし、そこに映像と音楽を加え、この世界をさらに濃密に創り上げている。
物語に関しては、さすがの一言で、ファンタジー好きにはもちろん、そうでない人も虜になってしまうこと請け合いである。次々と起こる謎の怪事件は子供心のあのどことない恐怖を再び呼び起こし、中盤から最後にかけて解き明かされていく真実の行き着く所には思わず嘆息してしまう。
自分の感想を書いてしまうと、{netabare}超能力というものの新たな認識の仕方に驚かされた。確かに良く考えてみると、超能力を得た人間は核兵器よりも恐ろしい平気と化し、現存する世界秩序を一変してしまうだろう。
愧死機構、そしてバケネズミ。これらのことから人間の朽ちることのない欲深さや罪深さが絶妙に描かれ、それでもより良い未来を夢見てもがいてきた人間の弛みのない努力というものがその背景に透けて見え、人間はいつでも現実の非常さにうちひしがれながらも戦ってきた歴史を見る。
最後の彼女の願いは現実的に言って、果たされる日は来ないだろう。しかし、全ての真実を知ったはずの彼女はそれでもなお、願った。人間はおそらく変わることはできないのだろう、それでもいつかみんなの幸せが来る日のことを思って。{/netabare}
テンポが若干速すぎるきらいはあるが、今までに出会ったことのないような物語に久々にしびれた。誰もに見てほしい名作である。