takekaiju さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態：観終わった
何気ない日常こそが一番面白いと気づかせてくれる
全てにおいて高水準。欠点らしい欠点が見つからない。
あえて言うなら何もアニメでなくても良いのではと思える内容の濃い脚本（これも褒め言葉!?）。
母の夜逃げに付き合う形で東京を離れた松前緒花は、石川県にある湯乃鷺温泉で祖母の経営する旅館「喜翆荘」へ身を寄せる。輝かしい当初の思惑とは異なり、旅館に住む条件として高校に通いながら仲居のアルバイトをすることになる。場の空気を読むことが苦手で暴走気味の諸花は従業員たちと時に衝突し、時に協力しながら仕事をすることの楽しさを覚え成長していく。
可愛らしいキャラクターデザインとはうらはらに、描かれているのは徹底して人間ドラマ。
特に自他共に認める空気を読めない（読まない）キャラである緒花の活躍に魅力を感じた。
{netabare}
従業員たちと打ち解けようと頑張るものの空回りして余計に迷惑をかけたり、板前の引き抜きと早とちりして周囲を引っ掻き回したり、毎日早起きして仕事を始め熱を出したりと、なかなか結果に結びつかない頑張りは、次はどんなことを仕出かすのかはらはらしつつも次こそ成功してほしいと応援したい気持ちにさせてくれる。一方でなかなか自分の本当の気持ちに正直になれないところは年頃の女の子だなと感じた。いきなり告白されて返事を返すこともできない序盤、相手を気遣って身を引こうとする中盤、自分の気持ちを確かめ一つの返事をした終盤。仲居として成長するとともに、恋愛面でも少しずつ前に進んでゆくところも見どころである。
{/netabare}
あまりにも評価が高いからと敬遠していたのが悔やまれるような良作である。作品の設定やプロットはありきたりで平凡かもしれない。けれど、だからこそ日常の中で輝く人々の生活や真摯に仕事に取り組むリアルな姿が浮かび上がってくる。
淡々と紡がれる物語はもちろん、安定した作画や作風に合ったオープニングとエンディング、強すぎない個性を持ったキャラクターたち、そして豪華すぎる声優陣。そのどれもがこの作品の雰囲気を崩すことなく、魅力を高めてくれている。
