STONE さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
地味と言えば、地味なのだが。。。
「アニメミライ2013」内の単発作品である「デス・ビリヤード」の世界観、設定を継承した
テレビシリーズ作品だが、「デス・ビリヤード」内ではストーリーに無縁な知幸が既に登場
していることを考えると、「デス・ビリヤード」制作時に既に本作の構想があったのかな。
基本的なものは「デス・ビリヤード」と同じで、死者の行く末を決めるシチュエーション
などは過去作品だと「スカイハイ」(漫画、ドラマ)を思い出す。あちらが死者自体が行く末を
選択できるのに対して、本作は裁定者により決められてしまうのだが、この裁定が単純に生前の
行動で決めるのではなく、その人間の本質的な部分で見極める点が面白い。
ストーリーの主軸にあるものは死者が行うゲームにあるのだが、ゲームの真の目的がゲームの
勝敗にあるものではないため、ゲームの展開自体は他作品のゲームもののような頭脳戦・
心理戦の妙を楽しむものではなく、比較的シンプルなもの。ゲーム自体はあくまで舞台設定の
一つと思った方がいいみたい。
ゲーム展開はシンプルだが、その分深みを感じられるのがゲーム参加者である死者達の
織りなすドラマ要素で、「デス・ビリヤード」では設定やストーリー展開自体に面白さを
見せるためか、死者達はやや記号的存在であるきらいがあったが、本作では参加者同士が生前に
関係があったりすることが多いなど、なかなか凝ったキャラ設定が多く、その分人間ドラマと
しての面白さを楽しめる。
ゲーム自体は死者の心の闇を引き出すための裁定者のためのものであるが、結果として死者が
ゲームを通じて、生前の行為に対して気付くことが多く、この「既に時遅し」といった部分が
なんとも空しさを感じさせる。
他に「デス・ビリヤード」と異なる部分では、「デス・ビリヤード」が結末を曖昧に
していたのに対して、本作は明確になっていること。
まあ、あれは一度こっきりだからできたやり方という感が強く、本作のようなテレビ
シリーズで毎回曖昧にしていたのではさすがに不満が溜まりそうだから、これで正解といった
感じ。
基本、1話、2話からなるエピソードの積み重ねだが、シリーズ全体を通しては裁定者である
デキムが知幸との交流を通して、次第に現行の裁定方法に疑問を持ち、変わっていく過程が
面白い。
裁定のために人間の感情を知ろうとしたデキムだが、最終的には感情を持てないはずのデキム
自体にも何かが生まれたみたいで、知幸との別れの際に見せた微笑みがそれを象徴しているかの
よう。
ここのレビューでは作品内容に言及することがほとんどで、OPやEDには記述することは
少ないが、本作品におけるOPの楽曲とそれにシンクロする映像はかなり素晴らしかった。
もっともOPの醸し出す雰囲気が本編の内容とは似ても似つかないのだが(笑)。
EDの方は回によっては死者達の生前描写などの本編を補助するような映像になっており、
本編内に入れるといささか冗長になってしまう部分であるため、上手い利用方法だなと思った。
キャラクターデザインがキャラ自体に人気が出そうなものではなく、展開やアクションも
派手なものではないため、あまり一般受けしなさそうな作品ではあるが、個人的には
忘れられない作品の一つになりそう。