Enchante さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
良質な映画なのに、全体的にキレがない
期待値が大きい監督なので、どうしても辛口になってしまいます。一言で言えばタイトル通りの印象を受けました。年齢的に今が脂がのった時期のはずなのに、これぞ会心作!というデキに至りません。
物語に出てくる現実世界の渋谷は、高校時代の最寄駅近くだったので、親近感があり、とてもよく再現されていると感じました。結構歩きますが、図書館の風景は懐かしかったです。いかにディテールを大切にしてるのかも分かります。それほど愛着がある場所のため、舞台が渋谷というだけで嬉しいのに、あまり共感できませんでした。
それは現実世界と「バケモノの世界」との対比が弱く感じるからです。バトルのシーンは迫力があるし、物語の構成も悪くないものの、全体的にメリハリがありません。
「バケモノの世界」の親代わりである熊徹が、アルバイトで生計を立てているとか、余計なリアリティを持ち込むと、魅惑的な世界が興ざめしてしまいます。いちいち説明しないても、苦労をしている様子がわかるように描けなかったのでしょうか?ミステリアスな雰囲気が希薄なため、観ている側のバイオリズムと一致せず、呼吸を共にできません。
現実世界に戻ると、楓というヒロインが彩りを添えますが、主人公は簡単に順応するため、落差を感じず、フィナーレに至るカタルシスも薄くなってしまいました。もっと厳しい現実を掘り下げられていれば、こういう事態に陥ることはなかったはずです。現実が最初から優しすぎます!
『時をかける少女』のような疾走感があれば問題がないのでしょうが、上述したように、ところどころテンポずれしています。主要キャラクターにしても、キラリと光るものが散漫になっていて、あまり印象に残りませんでした。
批判のオンパレードになってしまいましたが、『バケモノの子』は駄作でなく、丁寧に描いた良質な映画だと思います。ただし、少々の不備があっても、突き抜けた面白さが垣間見れたら、もっと評価も上がっていいはずです。