Enchante さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
中学生の頃に観た時は物凄くときめいた
アニメチックではなく、非常にリアルな描写と作画(伝説の近藤勝也が担当)が優れていて、物語そのまで魅了されていました。原作も後から購入して、こういうライトノベルもあるかと悦に浸っていたとまで覚えています。そして成人してから観返すと、かなり背伸びして自分に酔いしれたいだけだったのかな?と考え直してしまった作品。
なぜこんな事態に陥ってしまったかと言うと、原作者の故・氷室冴子さんには失礼ですが、それほど心の機微を描いたリアルさはないし、アニメにしても格別の余韻が残らない、と気づいたから。大人になって、あの感動をもう一度!となって見直すと、こういう落差に驚くことが多いです。無論、ライトノベルを馬鹿にするつもはないし、原画も美しいのだけど、タイトルの『海がきこえる』という魔法のネーミングセンスからの酔いが覚めたからも知れません。
とにかくヒロイン・武藤里伽子がとても魅力的でした。高知の田舎街を人から風景まであくまで峻拒する姿勢が自分と通じるものがありましたし、周囲の男子がソワソワしている点でトラブルを起こすなど彼女の中に自分を都合よく投影していたのだと思います。
一時的な東京への脱出劇も、私としてはひどく同情していました。しかし、振り返って距離をとってみると、単なる一人相撲の「やさぐれ」にすぎないと感じました。主人公の杜崎拓に密かに想いを寄せている様子がちっともない里伽子が愛らしいのは間違いありませんが、ツンデレを通り越して、今ではちょっと引いてしまいます。
それでも「海がきこえる」に呼応した、せせらぎのようなBGMは心地よく、これにまた騙されたくなりもします。ラストのホーム越しでの交錯に「海」がきこえて来そうな気がしなくもありません。
主題歌の「海になれたら」も里伽子の声を演じていた坂本洋子が透明感あふれるように歌い上げています。アテレコも歌もどちらも上手くないというより下手なのですが、このぎこちなさが当時はとても自然にマッチしていました。