Enchante さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
もっとファンタジックワールドに浸りたかった
せっかく良い世界観なのに、良い素材を持てあましてると感じました。
主人公のアンナは、良く言えば等身大の年頃の女の子を描いているし、悪く言えばオリジナルな魅力を押し殺した弱い女の子を描いているとも言えます。
キャラクターデザインは米林宏昌監督&安藤雅司作画監督ならではのハイクオリティ。主人公のアンナとマーニーはどちらも可愛いし、二人だけの密会は静かな「秘密の花園」めいていて、不思議な雰囲気が醸し出されていました。
個々の風景もとても綺麗でした。冒頭に物憂げにスケッチする姿や浴衣姿も良いし、湿地屋敷の明るさ(ワインが象徴的)と暗さ(ボート漕ぎ)の時のコントラストも映えています。
ジブリで良く問題と言われる声優陣については、特に何も言うことがありません。ちょうどブレイクしたての有村架純が声優をつとめますが、ミスマッチやド下手というほどでもなく、「へえ、そうだったの」という程度です。
もっとも、ストーリーはジブリ作品によくあることですが、独特の世界観を呈示しているためか、いたって凡庸。むしろ陳腐になってしまったと言っても良いかも知れません。
「思い出のマーニー」という謎は良いのに、せっかくファンタジーなのだから、現実世界での問題に対して、きちんと解決していく必要があったのかどうかは疑問が残りました。この点において同じジブリでも宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』(作画監督は同じく安藤雅司)が見事なファンタジーとして昇華していったのと対照的です。
さらにあまり面白味を感じないのは、男子不在なこともあってか、全体的にダイナミックさに欠けているからです。冒頭でアンナが虚しくスケッチする伏線がわかっていても、途中で現実世界の女の子に対して暴言を吐いてしまうシーンは、単なる情緒不安定さ以上のものをなかなか感じられません。原作を尊重してスペクタクル的なものを意図的に避けたのかも知れませんが、何だか小ぢんまりとした印象を受けてしまいます。
とは言え、後味が悪いわけではなく、ラストは清涼感に充ちているので、1000円の鑑賞料金なら満足のいく作品でした。