「となりのトトロ(アニメ映画)」

総合得点
88.1
感想・評価
1645
棚に入れた
11330
ランキング
132
★★★★☆ 4.0 (1645)
物語
4.1
作画
4.1
声優
3.8
音楽
4.1
キャラ
4.0

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Enchante さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

子ども目線で大傑作、大人目線でも大傑作

子どもの頃観た(と言っても公会堂での再上映)時、「これほどすごい映画はもうありえない」と思ったほど、私自身の人生の映画となっています。TVでの再放送も毎回観入っていました。もちろん、キャラクターグッズも取り揃えるほどのお気に入りよう。

ところが期間を空けて大人になってDVD鑑賞すると、「あれっ?それほどワクワク感がないし、自分の中で美化しすぎて過大評価になっていたのかな?」と感じてしまい、自分にひどく失望した覚えがあります。

アニメ映画に対してリスペクトが著しく欠けている「キネマ旬報ベストテン」(中高年以上の批評家の集まり)でも第一位となった作品なのに、これは一体どうしたことだろう?と。

そういうトラウマを抱えるのが嫌になって、幾度も観た『トトロ』をもう一度見直すことにしました。やはり子どもの頃のようなワクワク感は蘇りません。けれども、これまでハシャギすぎだった目線から大人になってから分かる郷愁的な美しい世界がそこに広がっていたことに気づきました。今までは年甲斐もなくメイとサツキの視点からしか見えていなかったのです。

それまで見落としていたお父さんの眼差しやおばあちゃんの物腰がとても共感できるようになり、同時に自然の美しさと凶暴さもヴィヴィッドに感じるようになりました。メイとサツキの振る舞いが何とも愛くるしいです。

実は、これ以外に『トトロ』のあるシーンがつまらないトラウマになっていました。それは「ネコバスが見えないおばあちゃん」の光景です。笑われるのを承知で書きますと、心がきたないから見えなかったと思い込んでいて、残酷な演出としてショックを引きずっていたのです。しかし、それも氷解しました。論理的に謎が解けたという次元ではなく、「子どものメイとサツキのために登場する特別な世界の生き物」だという設定が素直に受け入れられるようになりました。

ストーリーが起伏に富んでいるわけではないし、お父さん(糸井重里)の声は相変わらず下手で浮いているけれど、あれは純粋な世界に夾雑物を入れて、純粋性を気づかせる異化効果が働いているとも思えなくもありません。

最後に『トトロ』が数ある宮崎駿映画作品のうちで他と比較して突出して良いのは、OP『さんぽ』とED『となりのトトロ』がアニメソングとして格段に優れていることだと思います。

『魔女の宅急便』と『風立ちぬ』の主題歌を歌った松任谷由実の曲の方が一般的にクオリティが高いとされるのかも知れませんが、久石譲の遊び心あふれるセンスがひときわ光っています。井上あずみの声が『トトロ』の世界と最も共鳴しています。したがって私の中では『トトロ』が宮崎駿監督の最高傑作です。

投稿 : 2016/03/01
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