ブリキ男 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
殺せない。
呑気に暮らしているゴブリンを襲撃する主人公達に感情移入が出来ませんでした。最初期では生物を殺戮している事に対する抵抗があった主人公たちも、やがて慣れて、結局は平気になっていく様は我々の住む世界に存在するゲームと似通っている部分がありますが、自分たちのいる場所を現実と認識している彼らの中から、これまでの所、生物を殺すという行為に嫌悪感を抱いてリタイヤする人物が登場していないのは不自然の様に思います。こういった行為は出来る人もいれば出来ない人もいるのではないでしょうか? 私などは生きる為とは言え、普段の食卓に並ぶ牛や豚、鳥でさえ自分の手で殺す事は難しい様に思います。ましてや人と似通った生物であるゴブリンなどはとても殺せません。別の方法で生きるという選択を探すと思います。
物語はまだ中途なので、先に述べた事の原因が前世(ゲーマーとしての?)からの記憶の影響によるものなのか、単にまだその様な人物が描かれていないからなのかは分かりません。現時点ではどちらとも言えませんので、今後もハル達の行く末を見守って行きたいと思います。
~最後まで見終えて~
{netabare}
最終話のデッドスポット戦他におけるハルの超絶スキルは、やはりウィザードリィのクリティカルヒットに当たるのだろうなぁ‥とか思いながら観てました。同ゲームの上記スキルはAC(回避率)の影響を受けずに一定の確率で超強敵を仕留める事が出来るので‥。タイトルも※1隣り合わせの灰と青春と似ているし、※2カント寺院の文句もあるし‥そんな印象を強く受けました。今後の展開で更なる危機が訪れた時に、※3デウスエクスマキナみたいに都合良く使われなければ良いけれど‥。
生物を殺す葛藤について、最後まで一定以上に慣れが進まなかった点には好感が持てました。ランタについてはとりわけその傾向が顕著で、殺戮行為を無理にでも自分に納得させている様な描写があり、常に先走りで、乱暴な言動の目立つ彼の態度も、不条理に立ち向かう為に自らを鼓舞しているだけで、彼の心根の優しさの裏返しである様にも感じ取れました。彼はパーティーの誰よりも罪の意識を強く感じていたのかも知れません。
上記踏まえ、パーティーが冷徹なハンター集団の様になってしまわなかったのは幸いでした。もしそうなってしまっていたら、私は最後まで視聴出来なかったと思います。返せば、常に死と隣り合わせという状況だからこそ、描く事の出来るやさしさもあるのかも知れないと匂わせる、繊細で悲痛な物語なのでした。
※1:古典ダンジョンRPG「ウィザードリィ(Wiz)」を題材にした小説タイトル。
※2:ドラクエで言う所の教会に当たります。第一話のサブタイトルがカント僧の祈りの文句。お金さえ払えば死者の蘇生、毒の治療などをしてくれるありがた~い存在という印象もありますが、実際の所はとんでもない坊主達で、キャラクターの蘇生に失敗して灰にしても、灰すら無くなっても「オレ知らネ」で通してしまう。その癖お布施はがっぽり取って行く。なんかリアル‥。
Wizには他にボルタック商店という道具屋もありますが、やはりごうつくで、識別不明アイテムの鑑定料と、そのアイテムの売価が同額という驚きの黒さ! この店ではアイテムの呪いを解く事も商売にしていますが、こちらの料金も商品定価の半額と破格。ヒドいぼったくり‥。転じてボッタクリ商店と呼び習わされている。
※3:機械仕掛けから飛び出す神。舞台演出における強引な手法。いかにもな作為的な展開によって、物語を丸く修めてしまうというもの。多用するとわざとらしい物語になってしまう。
{/netabare}
2期にも期待したいと思います。