こめった さんの感想・評価
3.1
物語 : 3.0
作画 : 2.5
声優 : 3.0
音楽 : 5.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
考えさせられるアニメ
物語の内訳
ストーリー:3.5/構成:2.0/世界観:3.0/キャラ:2.0/テーマ性:4.0
平均2.9、よって物語3.0
{netabare} 【キャラ】
前作からの登場人物と本作からの登場人物、両方とも多いため、空気になる登場人物が多め。総集編やいらないシーンを削ってあげるだけでも、キャラたちはもっと活き活きできたのでは、と思う。関連して、この部分で構成が良くないと言わざるを得ない。
また、本作では、新たにシン・アスカを主人公に据えたものの、「何もわかってないくせに」という嫌なセリフ(個人的には、この言葉が大嫌いで、なぜかというと、他人のことなんてわかるはずないのに、一方的に<何もわかっていない>とか<人の事情も知らないで>を突きつけるのは、自分が相手のことを理解しようとしないサインだと感じたから)を吐きまくるうえに、まったく進歩しないし、ルナマリアとも理解不能な恋愛始めるし(まあこれについて、理解不能なのはルナマリアなんだけど)、シンが間違っている、間違っていない云々ではなく、悪く言うと主人公らしさがない、煩いだけの人物に成り下がってしまった(特に、40話以降、キラに重きを置きだしたあたりから)。監督が3人の主人公を置くことで3つの視点にするという試みはいいが、最後の最後で悪い方向に作用してしまった。
あと、でもでも人間のカガリはどうにかならなかったのかな……前作から数年経っているのに、成長がないとはいわないけど、何かなあとは思う。
【物語】
本作と前作の共通テーマは「非戦」。
前作が「人はなぜ戦争をするのか」を問うものであったのに対し、今作は「平和とは何か」を問うものであった。デュランダルが出した「平和とは何か」への解答は、SEEDとDESTINYからも分かるように、遺伝子調整による人の運命・役割等の管理であった。それに対して、キラやラクスの解答は見受けられない。ただ、デュランダルが出した解答は受け入れられない、という形で対抗する。悩み、苦しみ、妬み、恨み、憎しみ、殺して、生きて、泣いて、笑う、そういう風に「自分らしく」「人間らしく」生きたい、ということだろう。だから、デュランダルが悪で、キラやラクスが正義、というものでもない。ただ、「自分らしく」「人間らしく」いたい、そうありたい、何があるか分からない未来への不安があっても、自分で悩みながら、決めて、行動したい。不安だらけの終わらない明日、それでも自分で考えて生きる明日が欲しい、そういう強い意志が込められてるのではと感じた。
何が悪であって、何が正義であるのかは、作中でも感じられるように、見方が違うだけのコインの裏表。何が悪い、何が正しいというのも同じこと。誰だって過ちを犯したり、それに手を貸していたりする、意識的にしろ、無意識的にしろ。作中、デュランダルのプロパガンダやレイが、特に描写されているのはシンなんだけど、シンに兵士っていう役割を押し付けて、兵士として任務だから、命令だから、デュランダルは正しいから、と「思考停止」状態で戦いに臨んでいくのだが、これがWWⅡのナチスドイツに対してハンナ・アーレントが指摘した「悪の凡庸さ」と重なった。「いけない」ことだと知っていても、命令だから、上に逆らうのはできない、とついつい過ちに手を染めていく。それが「普通」の人間という指摘だ。
そういう意味では、やはりシンは主人公ではなく、普通の人間だったのかもしれない。
最後に、最初のほうでも述べたように、キラやラクスは「平和とは何か」という問いへの答えは出していない。
つまり、これは、これから自分たちが考えて続けないとならない命題なのだろう。{/netabare}