なる@c さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
満腹でも食べてしまうタイムリープものの魅力
※注意!※
原作未読でネタバレ回避したい方は、今作のウィキペディア項目(特にあらすじ)を絶対に見ないでください。誘拐殺人事件の真犯人が前置き無しで記述されています。もちろん推理は過程も楽しめるので魅力が完全に損なわれるわけではありません。しかし、真犯人を知っているか否かで今作の登場人物に対するイメージが大きく変わるので、ここに注意書きしておきます。
皆さん、タイムリープものはもう食傷気味だろうか。
古くは『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』、新しくは『魔法少女まどか☆マギカ』など。その間にも両の手で数えきれない程の作品数が存在する。しかしながら、タイムリープもののアニメが放映されるのなら観ないわけにはいかない。
タイムリープものには、解明できないもどかしさと解明された時の爽快感、そこから得られるカタルシスがあり、僕らは魅了されてしまっているのだから。
こういうシリアスものはある程度まとめて観ることにしているので、折り返し地点でもある6話まで一気に観た。正直、犯人がわかってしまった。わりとわかりやすいストーリーではあるが、アニメならではの演出でうまく緊迫感を出していると思う。
堅実な内容の作品が多い今期。今作はイメージとして地味な立場にいながら、1話を素晴らしい引きで締め、注目を集めた。雛月の事件の真相にあと一歩で迫ろうかという悟の母が、その日に殺される。悟は犯人に仕立て上げられ、混乱状況の中でリバイバルする。
故郷の小学校への通学路を歩く悟。ふと右を見ると、ポストが自分の目線より上にあることがわかる。右に曲がると、小学校が見える。掛けられている全国優勝の垂れ幕には、昭和63年の文字。悟はまさしく連続誘拐事件発生のその年にリバイバルしたのだ。悟の驚愕の目からカメラが引き、学校と悟を流れるように映して本編が終わる。そして、黒に白字のスタッフロールが流れ、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「Re:Re:」が流れる。
余談だが、この曲はアジカンが2004年に発売した『ソルファ』というアルバムに収録されている曲だ。今作の舞台は2006年の日本。今のアーティストではなく、10年以上前のアジカンが創りだす雰囲気の方が作品に合うと思っての起用だろう。大正解である。
1話の構成は、原作漫画1巻から大幅にストーリーを削っている。おそらく原作ファンの中には残念に思う人もいるかもしれない。しかし筆者は、1話でこの締めくくりの演出をするための省略なら納得できる。むしろ、1話でタイムリープまで話を進めなければ1クールで終わらせることなどできない。2話、3話と、毎回クリフハンガー演出(衝撃的、あるいは思わせぶりな終わり方)を効果的に使う構成にするためには必須事項だったのだと思う。
犯人の障害となりえる人物の頭上に蜘蛛の糸が降りる演出、リバイバル前に青い蝶が映るバタフライ効果(些細な出来事が、未来を大きく変える可能性を秘めている)演出など、不穏かつ神秘的な手法が満載で、視聴者の緊迫感を持続させる。
作風が全く違うので同意を得られないかもしれないが、今作は『監獄学園』と張るほどの緊迫感を演出出来ていると思う。今期が不作だなんてとんでもない。紹介動画だけで断定していた多数の人々は、反省してほしい。