やっぱり!!のり塩 さんの感想・評価

3.9
物語 : 3.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態：観終わった

☆雨が好きになるかも...と雨男が言える作品☆

■評価
テーマ性 ：★★★★　 4.0
作画美麗度　　　：★★★★★ 5.0
脚本＆構成巧み度：★★★☆　 3.5
男好み度　　　　：★★★　　 3.0
おススメ度 　　 ：★★★★★ 3.9

■ストーリー
靴職人を目指す高校生タカオ君は、雨の日には
学校をサボり新宿御苑で靴デザインを妄想するのが
唯一の生活の楽しみだった。
ある雨の日、同じベンチに居合わせたOL女性ユキノさんと
出会い交流を深めていくことになる。
次第にユキノさんに惹かれていくタカオ君であったが、
彼女には隠された秘密があった...。
この静かな孤悲(恋)の物語は行方はどうなるのか？

■感想
いつか終わると分かっている人間の関係性とか、
ピーンとはりつめた切なさの表現と空間演出が
とにかく上手いのが新海監督だと思っているのだけど、
本作も何と言っても一場面一場面の作画・音響が丁寧で
監督の作りだす繊細な空間がとくかく印象的だった。

ファンの方にはお叱りを受けるかもしれないけど、
ストーリーは僕が思っているよりも深くはない様に感じるし、
もし本作がテレビとかの実写ドラマでやると昼ドラ・レベルの
低級作品になってもおかしくない。
でも新海監督の演出・作画・音響で表現すると
見違える様に変わる。不思議な科学反応。

{netabare}
具体的な感想を書くと、飛ぶ事ができなくなった傷ついた鳥(大人の女性)と
まだ飛び方がわからない若鳥(高校生の男子)との触れ合いを通じて
飛び立つまでを描いた繊細な物語なのだけど、シンプルで短時間で
展開されるストーリーであるが故に余計な贅肉を省いて細かい所での
美作画や音響による演出に拘ったシンプルで繊細な作品だと思う。

僕がストーリーの中で好きな点は、この大人の女性(ユキノさん)を
愛せたのは、この高校生(タカオ君)以外にはありえなかったという点。
それが何かと言うと、この女性の元恋人(不倫？)関係にある男性教師が
登場する。彼は傷ついた彼女の事はやさしく心配しているけど、
なんせ自分もやるべき仕事や自身の悩みもあるだろうし、ある程度の
大人であれば自分のケツは自分で拭け!!というプライドというか
厳しさも持っているから、彼女の心配だけにかまけている時間も
心の余裕も無い。言い方が良くないかもしれないけど自分優先だ。
だから彼女の立場になって苦しみを分かち合ったり理解する事ができない。
だけどタカオ君の様に金はないけど時間と夢があり、まだ大人の事情
というものにスレきっていない高校生の視線だからこそ、彼女の苦しみや
存在を見つけ出す事ができたのかと思う。
もしかしたら、そういう風に僕が引き込まれただけかもしれないけど、
『誰かの視線(立場)を通して、同じ人や世界を見ていても、
全く違った世界や感傷を引き出す事』が、新海監督の一貫した
テーマなのかもしれないと感じます。
以前の新海監督の作品にも『誰かのまなざし』や『大成建設のTV-CM』も
きっちりと誰かの主眼(視線)で描かれているし、こういった一貫した
テーマに繊細な作画や音響とあわせる事が新海監督の作品の最高レシピ
なのかもしれないです。

また悪い点を書くと、えてして男性陣は本作に登場する男性教諭と
同じ様に強さ故に鈍感であったり、繊細な恋愛よりも熱烈な恋愛を
求める人も多い。だからそういう要素を持ち合わせている方は本作は
合わないと思う。
{/netabare}

繊細・美麗な世界観がお好きな方には安心しておススメします。

ご拝読有り難うございました。