yuugetu さんの感想・評価

4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態：観終わった

それぞれのヒーローの形

2015年秋アニメ。全12話。
漫画は最初の一巻だけで、続きが気になりつつもまだ読んでません。
設定から考えて「ラストはどんな落とし所になるんだろう」と思って見ていましたが、最後まで見てよかったです。

最強系主人公が無双する物語ではあるのですが、サブキャラクターの魅力（個性もしっかりしていますが、何よりヒーローというものへの向き合い方がそれぞれ違う）が作品を支えて面白くしています。
キャラクターの行動もわかりやすく、つい「ヒーローってなんだっけ？」みたいなことを考えてしまう部分も。

主人公が最後に出てきてパンチ一発で敵を倒してしまうパターン化した流れはありますが、見せたい部分がはっきりしていると感じられたので、私は気になりませんでした。


作画は凄いの一言ですね！
スピード感と重量感を両立した演出で爽快感もあり、作画も生きていてとても良かったです。

キャスティングは全体的に違和感もなく、演技も上手な声優さんが揃っていた印象。
サイタマ役の古川さんは物足りなさを感じるときもありましたが、キャラクターには合っていると思います。

音楽も作品に合っていました。
OP、EDは曲も演出も良かったです。キャラクターが最大のウリにも関わらず、雄大な背景やささやかな日常を映し出すような演出にはとても惹き込まれました。

{netabare}
序盤は少し淡白な印象でしたが、中盤以降サイタマとジェノスがヒーロー協会に所属してからが個人的には面白かったです。
ストーリー展開も一話ごとのキリが良く（若干ローペースに感じる所もありましたが）次回への引きも上手で、いつも先が気になりました。

主人公としては感情移入しにくいサイタマですが、半ば無理やり弟子入りしたジェノスが視聴者の気持ちを代弁してくれることも多く、最強キャラという印象だけにならないのがいいですね。このコンビ良いなあ。

サイタマが最強ではあっても完璧ではない主人公というのが本作の肝で、自分が強すぎるゆえに逆に空しさを感じるという、ありそうなんだけど感情移入がしにくい、というところが面白いです。
ヒーローのアンチテーゼですよね。

「ヒーロー」は人間性と実力を兼ね備え、一般市民に愛されないといけない、というのが作中ではヒーロー協会の原則としてあり、私たち視聴者がイメージするのもそうだと思います。
ただ、完璧系をやりすぎると無味乾燥なキャラクターになってしまうのも事実で、各キャラクターそのバランスが上手でした。

サイタマは最終的に無双するため、時間稼ぎをする別のヒーローが必要になるわけですが、他の方のレビューにもあるとおりそれを見せ場にすることで他のヒーローの存在感も生まれていました。
お約束のパターンにはなっていましたが、個々のキャラクターの魅力がしっかりしていたので退屈しませんでしたし、見せ方もとても良かったです。

そしてサイタマ自身の見せ方も良かったと思います。
特にヒーローとして実力派とはいえない無免ライダーの視点で見れば、圧倒的な実力を持ち、非難を受けても我が道を行くサイタマは憧れです。
でも一般市民が求め慕うヒーローはサイタマじゃない、というのが良いなあと。
見方によっては「ヒーローのヒーロー」なのかも。

ラストでボロスの顔を正面から見られないサイタマという絵が少し切ないですね。サイタマはボロスと違い「ヒーローでありたい」という気持ちがあるのでしょうし。
{/netabare}


続編があるかはわかりませんが、アニメ内ではまだ活躍しないキャラクターの顔見せもありました。
続編が予定されていないのなら伏線のようなものはない方がいいと個人的には思っていますが、ジェノスの仇の話など入れないと逆に「あの話どこ行った？」て感じでもあるので、まあ許容範囲内というところです。

キリの良い所で終わりましたし、面白かったので２期があるのならまた見たいと思います。（2016.2）