りくりく さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
働いている人はかっこいい
アニメーションクラブだった女子校出身の五人が実際にアニメの世界に入り、悪戦苦闘しながらもアニメーションを作り届けることを題材にしたもの。
音楽はオープニング、エンディング含めて全てが心に残り、作品への愛を感じた。なんというか、みんなで作っているということが感じられた作品だった。
端的に言ってしまえば最高のアニメだった。アニメーション製作の裏側を描いたものだけれど、この作品はそれぞれ違った人達の生き様を主題としていると感じた。
普段何気なく見ているようなアニメにだって、何十、何百もの人達が関っていて、それぞれ一人一人が独立した歯車となってアニメを作るというエンジンとなる。この作品ではアニメ制作業界と言った縮図だが、これは社会というものを表しているように思う。協力という言葉では表せないような人間の一方向に向う流れというものは潮流となって歴史をも動かす。
この作品の素晴らしい所はキャラクターの一人一人が個性豊かなだけでなく、視聴者から愛される存在になっているということである。現実世界と同じようにこの作品の中でもキャラクター達は生きていて、個人個人が彼等の意志に基づいて生きている。
なぜアニメ業界に携わっているのか聞いて回る回があるのだけれど、それが秀逸だったと思う。アニメが大好きな人、描くのが好きな人、誰かを幸せにしたい人、そして一番多かったのはなんとなく。自分の心を正確に言葉にできる人はなかなかいなくて、自分が楽しいこと、好きなこと、楽なこと、稼げること、そういった漠然としたものをたどっていった先にあるものが、将来と呼ばれるものなのだろう。
自分の設計通りとはいかなかった将来の世界に生きる彼等は、しかし、そんな将来にどことなく満足した風に、そして誇りを持って仕事をしていた。そしてその漠然としたものに向っていく途中の主人公は作品を通して自分というものを探す。答えは決して一つではなく、それは自分でしか見つけられない、でもそれを信じてくれる仲間がいる、というスタンスは非常に好感が持て、勇気づけられた。
また、ただ仕事を続けていくことだけが偉いと言われるような社会に対し、一石を投じたキャラクターもいた。どうしても自分のやりたい仕事ではなく、必死に悩んだ末に自分なりの答えを出した。それは世間的にはあり得ないと言われるけれど、彼女は夢を選び、その自分を信じた。一辺倒な答えだけ押し付けるようなつまらない作品でなくてよかったと感じた。彼女の勇気はたくさんの人の勇気にもなったと思う。
トラブルが起きた時にも、くさい台詞で簡単に終わらせないで、回を重ねて、人の後ろ姿を見て、たくさんの助けの中で徐々に成長していく姿はうまく演出されていて、一気に吸い込まれた。
多々、御都合主義な所は見受けられるが、それこそアニメの良い所であろう。夢を信じ続ける人は報われてほしい、一生懸命働いている人を応援したい、そんな気持ちが感じられるようなものだった。