なる@c さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
耳と目の娯楽
2016年冬の再放送で、初視聴。ただいま6話まで視聴済み。
5年前リアルタイムで観なかったことに後悔した。
タイトルで注目して欲しいのは、耳と目の順番だ。
アニメを「視覚情報に音が付属している」と認識している人の方が多いと思う。
しかし、このアニメを視聴する際、筆者は音に耳を傾けずにいられない。
メインテーマの素晴らしさは、言うまでもない。たららたら〜♪と、軸となるメロディが流れ、その周りを音が囲んでいく。穏やかな曲で、それだけでなく高揚感のようなものもあり、けれども急に音量が上がるようなことはなく、耳に心地いい。
それ以外の曲もキーを変えて軸のメロディが使われていたり、同じ音色で制作されている。明るい曲も、悲しい曲もだ。同じような曲ばかりにならず、一つの作品として見た時にまとまりがあって美しい。
また、SEの良さもある。
かるたを出す際のトンットンッ、カシャッという音、横に弾いた札が畳を滑り、畳の端からはみ出て板の間に落ちるバシッ……トントントンッ…………カチャッという音が非常に小気味いい。BGMも空気を読んでいて、そういった場面ではかからない。音が鳴る楽しさがあれば、鳴らない楽しさもあるということだ。かるただけでなく、メガネをポケット越しに触る音や、拳を握りしめる音など、小技が効いている。とても丁寧な作品という印象を受けた。
声優の演技も素晴らしい。どの声優も、感情的で戸惑いに溢れるリアルなキャラクターを見事に演じている。圧巻なのは3人の幼少期を演じた瀬戸麻沙美、高垣彩陽、寺崎裕香だ。数話のみの登場ではあるが、ちはやがかるたにのめり込むきっかけとなる大事なストーリーの中で、小学生ならではの理不尽なエゴから起こしてしまう {netabare}いじめ描写や、恋心からの嫉妬、泣き声など、{/netabare}実際の子役の演技を聴くような感覚に陥った。
音の話ばかりしているが、作画が悪いわけではない。どちらも高い水準にあり、その中で特筆すべき点は音の方が多いというだけだ。作画、特に演出面でも良い魅力がある。
{netabare}2話で、幼少期の綿谷が小学校のかるた大会で会場をざわつかせた第一札目。読み手が5文字言い終わる前に札を弾いた印象的なシーンだが、よく見ると手の振り作画以外は一枚絵だ。驚く客を高速でパンしていき、弾いた札が畳の上を走っていく描写を付け加えることで疾走感を出している。このように工夫が凝らされている場面は他にもある。すごいと思ったその一瞬、巻き戻して何回もよーく見てみよう。ちなみに上記のSEで音を例えたバシッ……トントントンッ…………カチャッはこの場面のことである{/netabare}
{netabare}また、3話で太一が遠い中学校に合格し、古谷の祖父が病に倒れたことによって、このまま3人でかるたを続けることが難しくなる展開になる。その時、言い争いをしている太一と古谷を破くような演出がある。その後には、自室に貼ってある百人一首暗記用の張り紙を破く描写へと変わる。なかなかに奇抜な演出だが、それ以上に、今作であまりこのような演出がなされてこなかったことも、描写の妙だと思う。BGMと同じで、今までそうしてこなかったことが、することへの布石になっているのだと思う{/netabare}
このアニメが個人的な歴代アニメランキングの何位になるかはわからないが、綺麗、優美という点では、間違いなくトップ10に入るということを確信を持って言える。
今作品は1期2クール、2期2クールで丸一年分の話数があるという。
いやはやなんとも、嬉しい限りだ。