退会済のユーザー さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
独特の世界感と胸に残るラスト
原作:安倍吉俊、監督:ところともかず。全13話
すこし解説しますと
「灰羽」とは、人の姿ですが、背に羽があり頭上に光の輪をもった存在。
彼女たちは繭から少女の姿で生まれ、これまでの人生の記憶を一切なくしています。「壁」に囲まれた街の外に出るこを厳しく禁じられた灰羽たちは、オールドホームという寄宿舎で暮らしています。独特の世界を舞台に灰羽たちの悩みと葛藤を描いた作品でありその世界感からカルト的支持があります。
本作の大きなテーマのひとつは、灰羽のもつ宿命と、それが元となる主人公ラッカとレキの関係にあります。作品の後半では、二人は悩み、葛藤し・・・結果
深い心の闇が描かれています。宿命という重いテーマを扱いながら、ラストは、非常に見事にまとめられています。
しっかりとまとめきれているからこそ、非常に完成度の高い作品であると断言できます。
この作品は村上春樹の文学作品に毛色が似ている指摘はあり
壁に囲まれた街という設定で「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の世界の終わりのくだりを連想するかと思います。本作の独特の雰囲気は、村上春樹の小説がかもし出す雰囲気に近いのは事実です。「世界の終わり」との共通点は他にもいくつかあるのですが、村上春樹作品の多くに登場する井戸も本作のストーリー上、重要なシーンで使われています。
薄暗いながらも独特の美しさのある背景に、灰羽たちの繊細な心を文学的に描いた本作は、芸術的作品としても捉えられるのではないでしょうか。
このような文学的色彩のあるアニメは商業作品として成功するのは難しいこともあり、本作が一般的な知名度はなくともアニメファンの間では高く評価されていることが非常に喜ばしく思うのです。