STONE さんの感想・評価

3.8
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態：観終わった

食を通して伝わる思い

　原作は未読。
　広義ではグルメものの一種なのだろうが、大半の作品が主役を始めとする主要キャラが
作る側か、食べる側に特化しているのに対して、本作品は作る人が食べる人でもあるのが
珍しい。
　ストーリー自体はそれほど大きく動くものではなく、食をモチーフにした日常ものといった
印象。

　いわゆるグルメものでは料理、調理方法、食べ方に趣向を凝らしたものや、素材への
こだわりが見られるものが多いが、ここで描かれるものはオーソドックスな料理を
オーソドックスに作ったものばかりで、良く言えば王道、悪く言えば平凡なものばかり。
　更にコンビニで買ったもの、デリバリーピザなど調理の必要のないようなものも。
　その分、誰と食べるのか、誰のために作るのかといった人へのこだわりを始め、イベントや
季節など、シチュエーションや精神状態で美味しくなるという描写が多いが、実際同じ料理でも
その時の状態で感じ方が変わるということは多々ある。

　特に「誰」という部分では食を通して伝わる愛情や友情が多々描かれる。
　町子 リョウ、森野 きりん、椎名が食事を友にするシーンはなんとも楽しげであるし、
リョウと祖母、きりんと母、椎名と母や露子との家族愛を感じさせる食にまつわるエピソードは
心暖まるものがある。
　家族愛ということに関してはリョウ、きりん、椎名が一つ屋根の下で共に食することで、
(特にリョウときりんは)一種の疑似家族のような関係性を築いているよう。

　食べる描写に関しては食欲の赴くままに食べるといった描かれ方が多く、ある種の
エロティシズムさえ感じさせる。
　これに関しては「性的な印象を与えるのは下品」という意見もネット上などで
見受けられたが、欲求に忠実という意味では食欲も性欲も似たようなものがあり、官能的に
映るのも当然かなという印象。
　まあ、その描写が視聴者に取って美味しそうに映るか否かは人それぞれだと思うけど。
　それは別にしてもそれほどセクシーな描写がないのに、リョウと椎名は妙に色気がある。

　作った料理を上方向に差し出すようにして、さも上段にカメラがあるようなシーンが多々
あるが、バラエティ番組の調理シーンで多く見られる構図で、突然入ってくるメタ的要素が
なんともおかしい。