にゃっき♪ さんの感想・評価
2.8
物語 : 1.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 2.0
状態:観終わった
they only wanna count our tears
視聴者の涙を誘う状況を繋ぎあわせたような作品。
無邪気な子供が理不尽に命を落とすシーンを見せられれば、たいていの人が泣いてしまいます。でもそれって感動と呼んでいいのでしょうか?
八百屋の店先に並んでるタマネギで涙が出るのを感動と思う人はいません。涙は感動と無縁とは言いませんが、涙が出れば感動というのは乱暴だと思います。
サッカーで初めて日本チームのワールドカップ出場が決まったとき、気がつくと涙が止まらない自分がいました。感動したんだと思います。今も出場が決まれば嬉しいのは当たり前ですが涙は出ません。
感動とは繰り返されることで薄まっていくもののような気がします。
初めて自分の子供の小さな手に触れたとき。
その子が初めてアルバイトして買ってくれた思いがけないプレゼント。
思い出しただけで胸が痛くなり、目頭が熱くなるような体験こそが感動なんじゃないかと私は思います。
この作品にはまったくリアリティが感じられません。と言っても幻想世界や光の玉の事ではありません。
ファンタジーな作品世界なら尚更のこと、そこで暮らしている登場人物の言動にはリアリティが必要だと思うんです。この作品は世界観ばかりかキャラの行動原理までもがファンタジーなのです。
先に制作側が視聴者を泣かせる状況を考え、登場人物に非常識な行動をさせるのが当たり前に行われている事に激しい違和感を感じます。
いつか結婚を夢見る若い方に疑似体験をさせるにしても、卒業して仕事を始めたから即結婚してアパート暮らしを始めるなど、ただのままごと遊びです。現実問題、結婚して新しい家族を維持するには、親の財力に頼れないなら、安定収入と7桁以上の預金通帳、愛情や信頼という名の妥協や忍耐が必要不可欠です。時期尚早な妊娠はともかく、臨月が近くなれば、どんな突発事故にも臨機応変に対処できるようにしておくのが常識で、最低でも渚を引きずって実家に戻す配慮が欲しかったです。
悲劇は起こるべくして起こりました。制作側の都合で、まともな行動をさせてもらえない主人公が不憫に思えました。
5年にも渡る育児放棄は何なのでしょう。そんな事で渚が喜ぶはずがないじゃないですか。
会いたくても会えない現実を背負って生きている人はいくらでもいるんです。視聴中は主人公が家族の意味も考えず、何の覚悟も出来てない結果訪れた、辛い現実を描く作品なのかと思いました。
しかし、まさか娘の汐まで同じように雪の中に連れ出して死なせるとは思いませんでした。
娘を使って泣かせる状況をつくるために作品内で時間を凍結してたんですね。準備を整え、万全を期そうと出来るだけの事をしても避けられない悲劇ならわかります。
学習機能のない主人公に当たり前の事をさせず、非常識な行動を積み上げて視聴者を泣かせる状況を繰り返すのは、あまりにも醜いシナリオだと感じました。
やり直しが効かないから今を精一杯生きるのが人生。全部リセットして済ませるような作品は、ただの作り手の自己満足にしか思えません。