タケ坊 さんの感想・評価
3.4
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
染みるショートストーリー
ウルトラスーパーアニメタイム、にて全4話で放送されるショートアニメ。
ショートアニメということで侮っていたけど、どうして、これが素晴らしい内容。
もしかしたら、今期のアニメでも、物語だけで見ればトップクラスかも知れない。
普段は見終わるまでコメント書かないですが、今回は内容にも少し触れてみようかと。
1話は吾妻さんが過去の自分の姿や思いを、現在の名木くんに重ね合わせて感慨に浸る、
ノスタルジー溢れる物語で心に染みる。
名木くんとの別れ、手を振るシーンは、現在の夫を送り出した時と被って、思わず涙ぐんだのだろう。
冒頭回想から始まる構成も、なかなかのもの。
ラストのオチは...旦那が途中で投げ出して帰ってきたお陰で、
吾妻さんが今シェフになって、二人が上手く行ったと考えれば、これで良かったんじゃないかな。
2話は、ながら観してしまったのもあって、最初はよく理解できなかったけど、
観返してみて納得、これは鬱なストーリー、かなり良く出来ている。
物語は主人公久米野が小泉との過去の関係を回想するもの。
台詞は必要最小限かつ表現が難しいので、観る者がきちんと読みとる必要があり(1話もそうだけど)
多少解り難いので普段しないけど、整理して書いてみる。
久米野と小泉は結局似たもの同士、孤独を感じているんだけど、
久米野が作った笑顔、上辺だけの関係の友達を囲っていたのに対して、
小泉は正反対、ボッチを貫いている。
小泉は「その他大勢」と同じように接してくる久米野が気に入らない。
久米野には「親友」がおらず、実は小泉と同じか、
それ以上に孤独であることを、小泉には見透かされていて、
それを指摘され、図星な久米野は逆上して泣き出し、ツバを吐きかける。
ようやく一皮むけた久米野に対し、小泉は歩み寄るが、久米野は駈け出して逃げてしまう。
もしあのとき、素直になって小泉と向き合っていたら...
結局その後高校を卒業し、大学を出て就職したのは良いが、
作った笑顔で築いた浅い交友関係は脆くも崩れ去り、本当の親友は出来ないまま、
結局今の自分は一人ぼっち。。
ラストは観る者に解釈を委ねるような終わり方になっている。
観た人がどのような解釈をしているか、ネットで2話の考察をしているサイトがあったので
見てみるとそこには、最後現在の久米野と小泉さんが「ごめん、あの時は」と和解したと解釈していたけど、
自分はそうは捉えてない(どれが正解かとは言えないけれど)
何故なら、久米野が小泉と言葉を交わしたのは、あの教室でのやり取りが最後であって、
メールアカウントなど小泉が知る筈もない。
現在の小泉はどこにも出てきてないし、あくまで想像の域。
冒頭の屋上で小泉が「あーっ」と言って空を見上げて溜息をつくシーン、
ラストの屋上のシーンは繋がっていて、時間としてはあの教室のやり取りの後、
存在しない久米野のアカウントへメールを送っている。
何故そんなことをするのか?
小泉も本当は友達になりたかったのに、素直になれず、引きずったままだった、ということを示している。
「ごめん、あの時は」と打ってあったのだろう、か..
小泉がメールを送信したあとに、あたかもそれが現在の久米野の携帯へメールが届くかのように見えるが、
これは実際には小泉とは無関係のメールだろう。
(シュタインズ・ゲートみたいなSFものと強引に解釈すれば無くもないけど笑)
まぁ、そうだったら良いね、と思わせる演出上のもの。
結局2話の物語が何を言いたいのかというと、「後悔先に立たず」ということ。
「本当の親友」になれたはずの2人が、結局なれずに、今も引きずっている...
何という鬱なストーリーだろう。
まぁ「ごめん、あの時は」という台詞があるから、想像上はポジティブにも捉えれれるんだけどね。
3話は、これまでで一番解りやすい話で、最後のオチも上手い。
もう一度観てみると、なるほどなぁと。
最初のはるかくんの映るシーンを観ると、他の周りの人物と同じトーンで描かれてないので、
誰もが騙されますよね。
ゆかりの声は「ばらかもん」に出てた子役の子ですね。
相変わらず上手い。
最終回の4話はこれまで3回の構成に比べると、あまり捻りが無かった感じはするけど、
オチはこれまでで一番ストレートにハッピーなストーリーでしたね。
松崎先生のプロポーズの言葉はなかなか素敵でした。
全4話、登場人物の一つ一つの台詞や雰囲気を、紙芝居風のアニメーションにすることによって、
憂いや温もりが伝わる、良い効果を生み出してましたね。
短い時間でも構成には凝って、ちゃんとストーリーにもオチがあって、
低予算でも良い作品は作れる、ということがよく分かりました。
1クール綺麗な絵で金掛けて作っても、大したオチも無くメッセージも伝わらないものよりは、
よっぽど良い作品だと思いますね。
まぁ、アニメじゃなくても良い、と言われればそれまでかも知れませんが..