101匹足利尊氏 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
曲がった視点が際立たせる“一刀修羅"の直線美
原作ライトノベルは未読。
テンプレなのに面白い。お約束なのに飽きずに見れた。そうした評も多い本作。
本作を構成する諸要素には私にも既視感がありました。
けれど、効果的なエフェクトによる正義やツンデレの演出などにも助けられ、
最後まで楽しんで観ることができました♪
特に好感できるのは、原作者が典型や王道展開を多用しながら、
それに無批判に自己陶酔していないことが、アニメからも伝わって来た点です。
それどころか作者の正義に対する視点は、相当に捻くれているとすら感じますw
と言うより、 {netabare} 終盤2つのエピソードに関しては勧善懲悪でもないですし。{/netabare}
結局勝つのは正義。最後に愛は勝つ。それを乱発していると見せかけて、
さらりと正道を歩む研鑽の果ての狂気、修羅道にも言及。
むしろ、真っ直ぐな生き様を斜に見る視点こそが、
正義の重荷で悲鳴を上げる人間が発する心の声を拾うことができる。
こうした正義を相対化する視点を挟み込んでくる。
この安心感が無邪気に正道を信じる人間以外……例えば私のような捻くれ者でも、
本作に入ることができる間口を広げた一因だったと私は思っています。
特にラストの {netabare}“一刀羅刹"の一閃は王道の相対化の極致だと感じました。
僅か1秒の斬撃を繰り出すまでに、
別に真っ直ぐでなくていい。そんな努力に意味は無い。もう楽になればいい。
悪魔の囁きや否定の言説を幾重にも重ねて来るw
実直であろうとする主人公への、作者のこの不信としごきw
きっとこの作家さんは一つの清く正しい物語を通すに当たって、
それを妨害する十の邪道を思い付くことができる
変態性の持ち主なのでしょうw
本当に正義に対して、もの凄くドSだな(苦笑)と感心しましたw{/netabare}
こうした流れから、私のお気に入りのキャラは当然、
{netabare} アリスこと有栖院凪。
彼はオネエだけど、いやむしろそれ故になのか?
自分は真っ直ぐ世界を見ることができない。
と自らを客観視できています。
その視点を生かして、主人公やルームメイトの真っ直ぐ過ぎる故の、
心の悲鳴を感じ取り、その傷を癒やすことができるのです。
実は、彼が一番作者の思考に近いように私には思えました。
他のキャラに比べ視点が一段高いと言いましょうか、実際、背も頭一つ高いですし。
彼の存在が物語を退屈な正義の最強主人公による無双になるのを防ぎ、
ストーリーに弾力性を与えていたように思います。オネエだけど。{/netabare}
王道も最初から王道ではなかったはず。
いくつものパターンから、理由があって指示され、定着していった……。
典型的なシーンをただいいとこ取りしただけはない。
試行錯誤の末、お約束展開の再定義に成功した、
作者の熟慮が実感できる王道ライトノベルアニメです♪