「響け! ユーフォニアム(TVアニメ動画)」

総合得点
91.1
感想・評価
3140
棚に入れた
13944
ランキング
42
★★★★★ 4.2 (3140)
物語
4.1
作画
4.4
声優
4.1
音楽
4.3
キャラ
4.1

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

心に響く感情ドラマ。

【概要】

アニメーション制作:京都アニメーション

2015年4月8日 - 7月1日に放映された、全13話+OVA1話のTVアニメ。
原作は、宝島社文庫から刊行されている武田綾乃による小説。

監督は、石原立也。

【あらすじ】

京都府宇治市。桜の舞う春。高校一年生になった黄前久美子は、
これから三年間通うことになる、北宇治高校の入学式の日に校内の通り道で、
吹奏楽部一同によるの部員勧誘のための演奏「暴れん坊将軍のテーマ」を聴くが、
ピッチもリズムも合ってない合奏の酷さに、『ダメだ こりゃ』との言葉が洩れてしまう。

小学四年から中学三年までずっとユーフォニアムを吹き続けてきた久美子は、
北宇治で新しいことを始めるつもりだったが、高校で出来た友達で別の中学の元吹奏楽部員の、
彼女・川島緑輝が吹部志望であり、中学ではテニス部員だった加藤葉月と三人いっしょに、
放課後の音楽室の吹奏楽部のクラブ活動の見学をすることに。

中学最後のコンクール結果のダメ金で満足していたはずの久美子は、
悔しさを隠さない高坂麗奈の泣き顔が頭にちらついたり、
姉に憧れて吹奏楽を始めたことを思い出したりして、中学では不完全燃焼だったのか、
緑輝に誘われて高校でも吹奏楽をやることにして三人とも入部。
そして、強豪校から誘われていた麗奈も北宇治に進学して入部を即決していた。

北宇治高校の吹奏楽部は凋落した元強豪で近年では京都府大会では目指せ銀賞レベル。
それが、今年から新しく顧問となった滝昇の指導の元で、
「全国大会出場」を目標に練習をすることになったのだが、一部を除いて技術的に拙い部員が多く、
なによりもやる気のない弛緩した空気が部内に漂っていた。

これは、問題だらけの部の意識改革と再建。そして、高校生の青春の物語である。

【感想】

京都アニメーションの代表作のひとつである本作品は、

監督としての石原立也氏の手腕は、スタッフからの信頼は絶大ではありますが、
シリーズ演出の山田尚子氏が好む、深層心理の無意識のジェスチャーの数々や、
背景を利用した数々のメタファーが、視聴者の意識しないところに情報を刷り込んでいく。
そこに、池田晶子氏による一人として同じキャラがいない、何十名も描きわけされた登場人物。
会社のノウハウとして蓄積された体温と湿度を感じさせる丁寧な芝居の利いたキャラ作画。
作画と演出の技術力による心理描写の表現の深化が場面の緊迫感を生み、
視聴者の登場人物への感情移入の導線になっています。
空気の淀みや気温を感じさせる緻密に描かれた背景作画と撮影技術。
音響監督の鶴岡陽太氏の指導による、久美子のアニメっぽくない素に近い声のお芝居。
洗足学園音楽大学の学生による、上手い下手の説得力のある演奏に同期した演奏作画。
高橋博行氏や木上益治氏らの役割は大きいと聞き及びます。

間違いなく実力を持ったスタッフの本気と本気が重なり合って生まれた表現力。
それはまるで熟練のオーケストラのようです。

この武器を手に、物語の中で登場人物がこの時何を思って発言・行動をしたか?
表情の裏にどんな本心があったのか?群像劇として人間の情緒の一つ一つを噛み締めながら、
繰り返しの視聴に耐えうるコンテンツが「響け!ユーフォニアム」だと思っています。

何故、これが絶大な支持をする熱狂的なファンを生み出しているかを考えてみますと、
青春について共感が得られる物語であるのが理由ではないかと?

今だけを楽しみたい者は、安穏とした場所で居心地がいい空間を作って遊んでいればいい。
逆に本気で何かを成し遂げたい者は、それ相応の努力や葛藤に付き合いながら、
叶わないかも知れない夢を実現させるために突き進んでいく。

何が正しいか?どうしたいのか?は当事者が決めればいいことであって、
部外者が口を挟むことではないでしょうけどね。

物語の主題は、高校生活で一つのことに打ち込んで燃焼するという、
青春の在り方なのでしょうか?

精一杯頑張るのはしんどいですし、誰にでもできることではない。
人に強制されてすることでもないですし、決めるのは自分自身。

向上心ってなんだろ?
いくら練習しても思うようにならない自分自身への腹立たしさ?
努力が報われなかったことへの悔しさ?

人は何故頑張るのか?
いくら頑張っても才能の差は残酷だったり、
気持ちが空回りして上手く行かなかったり、
そういうのを見ないふりして逃げるようなことをしなかった人にだけに見える景色が、
もしかしてあるのかもしれないですね。

京都アニメーション特有の作風によって、
多くの登場人物の湿度の高い数々の感情が視聴者に伝わってくるからこそ、
青春をかけて一つの物事に真摯に取り組むことの重さ。
これが、リアルに部活動などで青春を燃焼してきた人間からのシンパシーを得られ、
そして貴重な青春を溝に捨てて浪費してきた人間からは後悔の念を生んでいるなど、
視聴者の感情が強く引き出される。

少なくとも、実社会において経験が乏しく向上心や真面目さが無くて、
自意識だけが高い人間には、このアニメの真価が伝わらないのではないか?
言い過ぎかも知れませんが、その懸念を本気で感じてしまう作品でした。

何故、そう思うかと言うと、
自分では何も頑張らずに享楽的に青春時代を浪費したくせに、他人への要求だけは多く、
人の努力へ口先だけの評論をする浅い人間を現実の交友関係で見てきたからですね。
単純比較は出来ませんが、私はそれが過剰な人よりは頑張ってる人の味方をしたいですね。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2024/06/06
閲覧 : 793
サンキュー:

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