タケ坊 さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
究極の美
ポスト宮﨑駿とも称され、国内外で高い評価を得ている、新海誠監督の2013年映画作品。
今作でも冒頭から思わず息を呑む圧倒的な映像美は健在であるが、
もはや他の追随を許さない境地にまで達している。
(背景含めた)作画の評価を5点とすると、他の殆どに5点を付けれなくなってしまう...
まぁTVアニメと比べるのはナンセンスかもしれないが。。
可能であるならば、高精細なディスプレイと音響設備の整った場所で鑑賞したいと思わせる。
物語は劇的な展開がある訳ではないが、
ひたすら優しくしっとりと紡がれる「孤悲(こい)」は、
圧倒的な映像の説得力とピアノの旋律、極上の音響、間、
といった演出と相まって、非常に丁寧に描かれている。
ラストの主題歌「RAIN」への繋がりも見事であるが、
本当にこの作品の世界観にぴったりの曲で、深い余韻に浸ることが出来る。
登場人物は多くを語ることはないが、
これは観る者がイメージし、もしくは感じて読み取らなければならない、
いわゆる「行間を読む」という作業が必要である。
作中において万葉集の短歌が引用されている場面は、本作を象徴するシーンと言える。
仮にだが、もし2人の登場人物があれこれ具体的に口に出してペラペラ語っていたら、
それこそ陳腐なものになり下がってしまい、作品の持つ美の世界観をぶち壊してしまうだろう。
クライマックスでのみ感情をむき出しにする場面があるのは、
観るものの心を揺さぶるものとして、とても印象深い。
本作は46分という短い作品ではあるが、
非常に「贅沢な時間」を味わえる、まさに大人向けの作品である。
万人受けを狙うならもう少し時間を費やして、共感できる部分も描いた方が良かったかもしれないが、
現時点で到達しうるアニメーションのあり方の一つとしては、最高峰のものである事に違いない。