セレナーデ さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
誘惑に負けずよくがんばった
また虚淵玄お得意の功利主義かい、と思いきや、さにあらず。シンプル爽やかな人間ドラマにまとめられててなかなかよかったです。
この作品が一番えらいのは、あちこちにあるいろんな誘惑に負けず、アンジェラの心の機微を捉えることに専心できていたことでしょう。
新文明と旧文明に分かれた世界観だの、自我の生まれた知的生命体だの、シナリオに組み込んで使い倒したいはずの設定がテンコ盛りだのに、あえて掘り下げることはせず、むしろそれら全てをアンジェラの内面と態度の変化を描くための下地として扱われてます。
アンジェラを、当初は無駄と説いてた食の楽しさに目覚めさせたり、機械でありながら人間らしい感性を放つAIとの対比させたりして、自身の持つ価値観を見つめ直させていく。そういう、アンジェラという人物の心の遍歴を見せるストーリーに徹底するために、いかにもな世界観や設定を「面白そうだけど今回はプッシュしなくていい」とちゃんと割り切れてるわけです。
そういう意味で、ほとんどディンゴとアンジェラ2人の主観で話が進む(どちらかが登場するシーンしか映さない)スタイルは、アンジェラの心の機微を常に描くことができるいい手法だったと思います。
また、アンジェラの内面を描く姿勢がブレなかった特典として、物語の切り口だった「アンジェラはフロンティアセッターを粛清できるかのyes/no」を中盤で切り上げても、ぶつ切り感を感じさせなかった点もよかったです。
ただまあ、キャラの主観で話を進めてる分、世界観の説明不足に少々陥ってる感があるのもたしか。主にティーヴァなる施設。住人のほとんどが電子生命化されてるようですが、せめてティーヴァの住人はどういう生活リズムで過ごしているのかとかぐらいは見たかったですね。アンジェラが「素粒子を触れたことがある」みたいなことを言ってましたけどまさにそのシーンこそ映像で見たい。テクノロジーの発達具合とティーヴァでのプライベートの過ごし方を一度に説明できる絶好の場面でしょうに。
ご愛嬌の域だけど虚淵節とも言える説明セリフのマシンガントークタイムも健在。あと今思えばディンゴの人格の高さになにか説得力が欲しかった気もする。
アクションシーンはどれも迫力満点でステキ。なんだけど作画的に一番心に残ったのは3DCG作画であることの先入観につけ込んだアンジェラの顔芸の不意打ち。