migratory さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 2.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
本当の物語を差し置いて、光り輝けるおっさんたちのアニメ愛
正直、ビジュアル的に食わず嫌いをしていましたが、正月の一挙放送を見て、その愛に絆されました。
また、本作品を漫画家の世界で悪戦苦闘する「バクマン。」の登場人物たちと重ねて見てしまっているのですが、アニメ制作会社で働く人たち(を仮に総称しておっさんとする)の紆余曲折を経てアニメが作られている、その熱意ある物語の方が面白いものとして演出されていると感じる点がその所以だと思っています。
舞台は武蔵野アニメーションというアニメ制作会社(通称、むさに)。
主人公である宮森あおい(入社1年目の制作進行)、安原絵麻(あおいと同じ職場のアニメーター)、今井みどり(あおいの後輩で脚本家志望の大学生)、藤堂美沙(3Dクリエイター志望)、坂木しずか(声優志望)
それぞれの夢を通して、アニメ制作の現場が表現されているのがこの作品の魅力だと思います。
また、宮森あおいの成長物語とも取れる観点で物事は進みます。
意外とアニメを作っているという誇りより、基本的な自分が何をしたいかを考えさせる職種であるとともに、それぞれ違った考え方をしているという人間関係での人間的なものが基盤にあった物語だと感じるので、働く人全般に言えることの共通認識として楽しめる作りになっていると思います。
なんだかんだ言ってどこの職業も変わらない、みたいな。
仕事観も特に押し付けに無く、バランス良い配分にあって、本田さんという心の中イケメンやお調子者のタローなどキャラクター描写も細かく、その点は脚本家さんのこだわりが出ているのかなと感じます。
ほぼ使えない奴呼ばわりされてた高梨太郎(通称タロー)は、アニメの話としてはなくてはならないキャラクターで、寧ろたんたんと進むアニメ制作の橋渡し的な意味でも箸休め的な意味でも優秀で
後半は平岡大輔(中途採用のメガネの一匹狼)が主人公に上手くテーゼを投げかけていたと思います。
個人的には、木下誠一監督の持つコミカルさが、時に物事を崩壊させているんだけど、時には救っているとも言える、そんなあぶなっかしげなキャラクターが終始一番面白く魅力的でした。
作業が割り振られてからは個別で行う、異なった考えでもまとめられる(いや、まとめるしかない)というその過程のなかに、敢えて言うなら情熱というものを間々感じました。
あと、その情熱が時おり「頭文字D」の藤原拓海ばりのレースとなって繰り広げられています。
{netabare} ~
簡単にまとめると1~12話までは、武蔵野アニメーション制作の元請作品となる「えくそだすっ!」を軸に、アニメ制作の諸々がともに描かれ、物語の後半の13~24話は人気コミックスの映像化として「第三飛行少女隊」を軸に、その諸々が描かれています。
↓各話さぶたいとる。参考までに。
1「明日に向かって、えくそだすっ!」
2「あるぴんはいます!」
3「総集編はもういやだ」
4「私ゃ失敗こいちまってさ」
5「人のせいにしているようなヤツは辞めちまえ!」
6「イデポン宮森 発動篇」
7「ネコでリテイク」
8「責めてるんじゃないからね」
9「何を伝えたかったんだと思う?」
10「あと一杯だけね」
11「原画売りの少女」
12「えくそだす・クリスマス」
13「好きな雲って何ですか?」
14「仁義なきオーディション会議!」
15「こんな絵でいいんですか?」
16「ちゃぶだい返し」
17「私どこにいるんでしょうか…」
18「俺をはめやがったな!」
19「釣れますか?」
20「がんばりマスタング!」
21「クオリティを人質にすんな」
22「ノアは下着です。」
23「続・ちゃぶだい返し」
24「遠すぎた納品」{/netabare}
SHIROBAKOを並び替えると、SORA/KIBOH(空と希望)になるんですが、さいごまで見ると作品としての雲へのこだわりが、再三問われていた「第三飛行少女隊」で込めたかったことの集約が、そのままそこに繋がっているものだと感じて、アニメに対する見方が変わったような気持ちに、その上空をかけるということだけで、なぜか心地良く感じさせてくれました。