アレク さんの感想・評価
3.5
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
もしも超能力が使えたら
面白かったです、それに知的好奇心をくすぐられるところもあって
作品の奥に終始底流している不気味というかほの暗い
雰囲気もありその原因となる大本を知りたいがために
1つの話が終わってもすぐ次の話が見たくなりました。
作画は後述しますが自然が多く牧歌的なはずですが
この物語の雰囲気を反映してか暗く色調も沈み曇ってます。
物語の設定としては1部の人類が超能力に目覚めたが
故あって人口が極端に減少し文明退行の道を選んだ後の
日本の架空の町神栖66町の早季を主人公として話が進みます
話のプロットしては大きく分けて2つに分かれておりいままでの早季たちが
知ることがなかった人類の本当の歴史を知る主に学生時代の前半
早季が大人になり旧友との別れを経験した後バケネズミとの闘い、
それが終わった後にわかる人類の歴史の奥にある
隠されたもう一つの真相がわかる後半と分けることができると思います。
前半の感想
{netabare}前半としては彼女たちがカヌーでの校外学習の折彼女たちの
冒険心と偶然が重なり情報がインプットされたロボットの
ようなものに遭遇しそのロボットみたいなのから
彼女たちは人類の血塗られた歴史を知ります。
簡単に説明すると人類の1部が超能力に目覚めその対応に追われ
混乱していたがすべてを救うヒーローは現れず
人類は混沌とした対立の末1人の超能力者が無能力者を支配する奴隷王朝、
無能力者が集まりその支配を逃れひっそりと過ごす集団、
それをつけれ羅う超能力者の狩猟民族、
そしてそれらを観察する超能力者たちという4つの集団に分かれ
早季たちはその4番目のグループの子孫だということがわかります
そこで初めてこの作品で今までちょいちょい挟まれていた
断片的なシーンが今までの人類の歴史シーンの一部を切り取ってたことに気づきます、
不可解なシーンが多かったのですがこの
話を聞いた後に振り替えるとせんが一本につながるようで結構快感でした。
そして話は早季たちの祖先がなぜ文明退行を選び少数の超能力者たちだけで
生活することを選んだかという話になるのですが
彼らは今までの観測から奴隷王朝のような集団対1人だと
いつ謀反が起こるかわからない、当然ですね
超能力者だけにしても力の大きさゆえいつ大規模な戦闘になるかわからない
そこで愧死機構という人間に超能力を使えないよう
遺伝子を改造し幼児期の刷り込みも合わせることで
それを防いだと説明されますね、
彼らは集団生活を一瞬で崩壊させる悪鬼や業魔を何よりも
恐れていたことがこのキャンプの後、瞬が業魔となり早季と別れ
富子からもう少し詳しく歴史を聞くことでもわかります。
遺伝子に欠陥を持った1人の人間により人類は多大な被害をこうむります、
その反省として法律を変え学生の間に
性格や能力に問題ある人間はいつでも間引けるようになった。
ここで早季たちの学生時代に消えた人たちの説明がつきます
話はそれますが搬球トーナメントで倫理観の欠如の烙印を押され
間引かれる子の話ですが子供のころのこうした遊びって
結構性格というか本性出るんですよね、そこに注目し
遊びを装い性格を図る試金石とする結構鋭いと思います。
それに早季たちが消えた子たちのことをいつの間にか忘れてたように
瞬のことも併せて考えると彼女らは記憶操作されてたようですね
いずれにせよ子供時代は今までの手痛い経験もあり厳重な監視下にあったのでしょう
真理亜の手紙にもあった通り額に脂汗を浮かべながら卵を見守る
大人たちという例えがぴったりだと思います。{/netabare}
後半の感想
{netabare}烙印の判を押され処分されること恐れて自活の道を選び
村を出る守と真理亜と別れ幾年早季は26歳になります、
不穏な空気がバケネズミのコロニーから漂いその中で
守と真理亜が本当に死んでたという事実には驚きました
ミステリー小説の大家の人が原作なのでこれはミスリードで
前半の早季の意味深なモノローグもあったし実は生きてるんじゃないか思ってたのですが・・・
ともあれ戦端は開かれ多大な犠牲を出しながらなんとか人間側が
勝利しますがその後バケネズミの祖先は呪力を持たない人間だった
という物語の根幹にかかわる衝撃の事実がわかります。
姿を無理やり変え愧死機構の範囲外に置き
差別、区別することが当然だという認識を両者に植え付ける
ここで前半の奴隷王朝が終わった後の民衆や
隠れて生きることになった呪力を持たない人間たちが
どうなったかという疑問が回収されます。{/netabare}
総括
{netabare} 全話見た感想を書くとよかったです、胸糞な話も多かったですが
ぎりぎり未来に希望が持てる終わり方だしそれに話自体暗く陰惨でしたが
1個人の醜い部分に立ち入ることを避けIFの世界での
機構を覗くというスタンスで作っているのでいつまでも
鬱になる感じでなく後に引きずらなかったのでそこはミステリーっぽいなと思いました。
それに早季の最初のモノローグの意味が真理亜の子供という意味だと最後にわかるし
愧死機構を逆手に取り人類に侵攻し愧死機構故に敗れる
見事に伏線を回収してそこも上手いと思います。
それに野狐丸も忘れられないキャラクターですね
面従腹背を地で行くような性格だし
彼の用意した策略も呪力がないだけで奴隷同然の扱いを受けていた
バケネズミたちのすべての恨みが乗っているようでした。
もし超能力が使えたらという発想から生まれそこから歴史を構築していくわけですが
その際キリスト教的な人間を生物として1段高いとことに据えた価値観
ではなく祖先のサルから進化した人間というものの見方
即ち1社会的生物としての習性や集団生活を送る上での
問題を知り尽くしそれを未然に防ぐ枠組みを造った
その枠組みを造った人たちはきっと人間のもろさ卑しさを知り尽くし
想定したうえで作ったのでしょう、バケネズミの対応を見てもわかります
枠組みの奥にある真意がわかった時には諦念にも似た
製作者たちのため息が聞こえるようで何とも言えないやるせない
気持になりました。
自らの手に余る能力が突然変異的に発生し
能力を律することをできずこのままでは互いに破滅するしかない
能力者と無能力者の差別はなくさない、だがヘイトは積もらないような
先入観を植え付け同志でも互いに食い合わないルールを考える
先人たちの歴史は互いが破滅する未来を避ける
ルール造りの努力の歴史でもあったわけです。{/netabare}