空色の猫 さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 5.0
音楽 : 3.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
大胆すぎる着想と甘すぎる恋愛を緻密に。
政府が検閲を正当化し、武力・暴力による執行も辞さないために、対抗勢力である図書館も武装してから三十年の日本を描く物語。
初期設定は突拍子もないが、その状況が定着したと仮定したあとの展開は非常に良く練られており、極めて上質なファンタジーと言えるだろう。
そうした表現の自由を巡るストーリーを軸にしながら、不器用で純情すぎるバカな大人の成長譚、子供のような恋愛模様まで織り込んだ贅沢な作品である。
主要人物が成年であり、努力して向上するタイプという、近年のアニメの主流からは完全に外れたキャラメイクながら、どの人物も割合の差こそあれ、大人の魅力と子どもの純粋さを併せ持っていて面白い。
声もよく嵌っているし、複雑な心情を抱えているであろう描写を丁寧に表現していると感じる。
下地が非常に細かくできているので、余り変な効果を付けられても困るが、作画と音楽はもう少し冒険しても良かったと思う。保守的に過去の名作っぽい作りにしようとしなくても、結果的に評価され、新しい基準になるだけの力を秘めている作品のはずである。
脚本・演出も素材が良いからそれなりに観られるが、せっかく活字媒体を手間暇かけて映像にするのだから、もう少し工夫があっても良かったと思う。